研究課題/領域番号 |
23510253
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
根本 直人 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60509727)
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キーワード | Peptide aptamer / In vitro selection |
研究概要 |
低分子化合物に対し親和性・特異性で結合するペプチドアプタマーを進化工学的手法により創製することを目標に研究を進めてきた。具体的には配列内に複数のジスルフィド結合を有する30残基程度のペプチドライブラリから低分子結合ペプチドアプタマーを取得しその認識メカニズムを解明することを目的としている。平成23年度に申請者らが開発したcDNA display法により24年度は蛍光分子fluoresceinに対し試験管内淘汰を複数回行ったがfluoresceinの疎水性が高いことから非特異的吸着分子との分離が困難なことからこれに対する親和性分子を取得することが困難であることがわかった。そこで、新たに標的分子をより親水的なビタミンの1種であるビオチンとした。これに対し2種類のランダムライブラリを用いてcDNA display法を用いin vitro selectionを行った。また、迅速かつ簡便な新規の無細胞翻訳系を用いたプルダウン型タンパク質相互作用解析法の完成度を高め論文として発表した。 ビオチンに対するin vitro selectionでは、トータルで10回以上のスクリーニングラウンドを回し、最終ラウンドでのライブラリを90種類ほどクローニングしてシーケンシングを行った。その結果、数種類のペプチド配列に収束し淘汰されてきていることがわかった。蛍光相関分光(FCS)法による分子間相互作用解析では、このうちの1種類はビオチンとの相互作用が確認された。そこで、現在、これらの配列を化学合成しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光分子のfluoresceinに対してのin vitro selectionが極めて困難であるという認識から同じ低分子でもより水素結合を形成しやすいビオチン分子に標的分子を変更した。この変更によりin vitro selectionの選択系がfluoresceinのときに比べビーズの表面修飾の種類等の違いから選択が容易になった。このため実際にin vitro selectionを行った結果、以前とは異なりライブラリのダイレクトシーケンシングにおいても配列の変化が確認されるに至った。この成果を踏まえ、クローニングを行い実際に選択されたペプチド配列を確認したところ第一次候補配列の絞り込みとして数種類の配列に絞り込むことができた。現在、これらのうち数種類のペプチドの化学合成を行っている。予定より若干ペースが遅れたものの最も困難と予想された実験段階を突破できたことから、3年目で研究を加速させることは十分可能である。
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今後の研究の推進方策 |
現在合成中のペプチドに関し、相互作用、親和性、認識特異性に関し順次解析を行う。架橋パターンを解析するためには当初は予定していなかった高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や質量分析を行う必要もある。また、ある程度成果がまとまった段階で論文にまとめたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的にはペプチド解析のための試薬や消耗品を中心に考えているが、特にペプチド架橋構造の決定のために新たにペプチド合成を行う必要もあるかもしれない。 その他は、論文を作成するうえでの英文校正費、論文投稿費を考えている。
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