研究課題/領域番号 |
23510256
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
竹谷 茂 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20121949)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | heme biosynthesis / heme degradation / protoporphyrin / ferrochelatase / ALA-PDT / 5-aminolevulinic acid / cancer |
研究概要 |
腫瘍組織でのポルフィリン誘導体の特異的な蓄積の機構を明らかにする為に、5-Aminolevulinic acid (ALA)ヘム合成の終末酵素のferrochelataseの活性や量の低下がprotoporphyrinの蓄積の大きな要因であることを明らかにした。さらに一酸化窒素がferrochelatase低下をもたらす要因であることなど、一連の検討を加えてきた。種々の化合物や蛋白質分子の発現によるALA-PDTへの影響を調べる中で、弱い金属キレーター作用を示す抗菌剤のキノロン化合物がprotoporphyrinの蓄積を増加させることが分り、キノロン化合物が光障害を示す原因として、薬剤性ポルフィリアの可能性を示唆した。その他、鉄イオンの再供給源であるheme oxygenase (HO) の阻害剤で細胞を処理して、ALA-PDTへの影響を検討した。HeLa細胞のSn-protoporphyrin処理でprotoporphyrinの蓄積の著しい増加と光感受性の亢進が見られた。HO誘導剤のヘミン処理を行うとHO-1の誘導と共に顕著な蓄積の低下が認められた。HOの高発現や他のHO-1誘導剤でも低下した。一方HO siRNA処理で発現低下させるとprotoporphyrinの蓄積は増加したのでヘム鉄のリサイクルがPDT低下の要因であることが分かった。さらにミトコンドリアの鉄利用に関与するmitoferrin, sideroflexinやfrataxinについても検討を加えた結果、発現量の増加と低下でそれぞれ光感受性の低下と亢進が認められ、鉄代謝機能の変化が関係する事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroにおけるALA-PDTの機構については概ね明らかにすることが出来たが、in vitroに置ける観察を経て、in vitroでの結果を確証する必要がある。これらには抗体に作製など多くの実験が必要である。また、癌細胞における癌遺伝子の発現や癌抑制遺伝子の変異や低下とALA-PDTもしくは鉄代謝との関連は全く、計画が遂行されていないので、実行の必要性を感じる。また、ALA輸送体の単離とALA-PDTの関係を明らかにする必要がある。ポルフィリン輸送体についても計画が実行されていないので早急に進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
癌抑制遺伝子p53と鉄利用の関係さらにはALA-PDTのp53変異による亢進を、siRNAを用いた機能低下を行って、frataxinやmitoferrinなどの鉄代謝関連の蛋白質機能の変化ならびにALA-PDTの亢進を調べる(費用40万円)。 酵母のヘム要求株を用いてALA輸送体を単離同定して、癌細胞での発現亢進を調べる(費用40万円)。 同様にヘム要求株を用いてhematoporphyrin transporterのスクリーニングを行って、単離同定して癌細胞での発現の亢進を調べる。また、CNT-1の癌細胞での発現についても調べる(費用30万円)。
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次年度の研究費の使用計画 |
ALA誘導性の癌細胞の光感受性の獲得については、ミトコンドリアの機能を支配するPGC-1やRXRの核内リセプターを介するヘム合成系や呼吸鎖蛋白群やp53の癌化による機能変化やNuclear Respiratory Factorの関与によるミトコンドリア機能の変化を調べる。ROS産生の増加に伴う分子機能の変化を調べて、2価鉄イオンのヘムへの利用などの癌特異的なフェノームを明きらかにする。種々の抗体を用いて顕微鏡や電子顕微鏡レベルでの新しい機能実体をつきとめる。ヘマトポルフィリン輸送分子のひとつであるp22HBPをベイトとして、酵母two-hybrid法を用いてスクリーニングを行って、Serine methyltransferaseI,II 型を単離した。これらの蛋白質がミトコンドリアへのヘムの取り込みに関与するかについても検討を加える。ヒトのヘマトポルフィリン輸送分子についてもPCR法を用いて単離する。また、ヒトの本分子に対するモノクローナル抗体を作製して、ヒト腫瘍組織を含む種々の組織でも分布を調べて、癌診断や治療への応用が可能かを調べるヘマトポルフィリンと相互作用する細胞膜分子の有力な候補としてCNT1を既に同定した。CNT1とヘマトポルフィリンの相互作用をポルフィリンカラムを用いて調べる。また、CNT1とヘムや金属ポルフィリンとの親和性の有無やポルフィリンの特異性についても検討する。また、マウス肝臓や腎臓から細胞膜画分を得て、可溶化後カラムクロマトグラフィーを行って蛋白質を分離する。可溶化産物を種々のポルフィリンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーを行って、これらに結合する蛋白質を得る。
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