研究概要 |
5-aminolevulinic acid (ALA)-photodynamic therapy (PDT) の分子機構を、昨年に引き続いてミトコンドリアの鉄代謝関連蛋白質の変動を中心に研究を行った。その中で、鉄シャペロンfrataxinはミトコンドリア内の鉄輸送や鉄含有蛋白質の形成に関与することが知られている。先にマウスfrataxinの発現は癌抑制遺伝子p53によってポジティブに調節されている事をしめしたが、本年はヒトfrataxin遺伝子のp53による調節を調べた。正常細胞のp53機能をphilithin-α処理することで、阻害させるとfrataxin mRNA量は低下した。そこでヒトfrataxin遺伝子領域のp53依存性発現を調べた。近位プロモーターの-300bp付近に存在するp53応答様領域についてレポーター活性を測定した結果、-273-264bpにp53応答を見いだした。また、CHIP assayでも、p53が同領域に結合し、癌細胞では結合しないことが分った。さらに、HEK293T細胞のp53をノックダウンさせるとfrataxin mRNAおよび蛋白質レベルが低下した。また、frataxin発現株を用いてALA-PDTを行い鉄の添加効果を調べた所、protoporphyrinの蓄積量が極端に低下した。従って、癌細胞ではp53の変異に伴って、ミトコンドリア内のfrataxinを含む鉄代謝に関与する蛋白質群が異常もしくは低下して、鉄利用が低下して、癌細胞特異的にprotoporphyrinの蓄積が起こる事を示した。一方、ALAの細胞への取り込みについても研究を行い, Na+, Cl-依存性neurotransmitter輸送体SLC6A6, SLC6A8, SLC6A13 がALAおよびALA-methylesterを取り込むことを明らかにした。ALA-PDTはneurotransmitterのGABA, TaurineやCreatineなどで阻害されることが分かり、これらは、種々のヒト癌細胞や大腸癌組織に多く発現して、ALA-PDTを行う良い指標であることを明らかにした。
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