研究課題/領域番号 |
23510257
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡辺 裕 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (40114722)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イノシトール / 選択的置換反応 / LiCl / DMA / 光学活性 / 無保護 / 有機合成 / アシル化 |
研究概要 |
イノシトールへの無保護による選択的アシル化について検討を行い、1,3-ジアシル置換体が収率良く得られる方法を見出した。芳香族アシル基の導入に比べ脂肪族系のアシル化については対応する無水物あるいは混合酸無水物をスズジピバラートの存在下で行う事で上手く行くことがわかり、各種ジアシル誘導体の直接合成が出きる事となった。一方、1位モノアシル体の合成は、用いるアシル化剤の当量数を限定することによって70%程の収率で行えることがわかり、合成的に使える方法になったと思われる。以上の置換基導入法の確立は今後、最終目標のバイオマスとしての利用に繋がって行くものと考える。光学活性イノシトール誘導体を得る方法の開発について、酵素を利用するものについては1,3-ジアセチル体にリパーゼAを作用させることで収率75%、光学純度96%の1-O-アセチル体を得ることができた。この方法に基づいて合成的に利用出きる手法の開発に改善を加える。一方、キラル素子の導入による光学活性誘導体の合成法について種々検討を行ったが、上述の酵素法に優る条件を未だ得るに至っていない。23年度の計画を遂行中、反応系として利用するLiCl/DMAの反応媒体がポリオール類の反応の促進と選択性を上げることを見出した。逆に、この媒体では、一般の第一級、第二級アルコールの反応性が大きく低下することがわかった。この効果は主にLiClの影響によるものと考えられる。この事実は、糖類などのポリオール類の合成に役立つものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の計画した項目について、概ね成果が得られた。すなわち、目的を達成するために行う事項を提案し、それらについて種々検討を行った結果、イノシトールへの選択的な置換基の導入を行う方法論を提案できるに至った。キラル素子による光学活性イノシトール誘導体を得る計画については、もう少し検討を加えて合成的に使えるまでにする必要がある。その意味で、23年度の計画については、なお残す所があるが、概ね順調に進んだといえる。
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今後の研究の推進方策 |
キラルモノアシル体の合成的利用ができる手法を確立できるところに近づいたので、これを合成手法としてを確立するとともに、光学活性イノシトールリン酸やイノシトールリン脂質類の短工程全合成に応用展開して目標を達成する。一方、1位アシル体、1,3位ジアシル体が選択的にできることになったことから、当初の計画の機能性物質の創製を種々検討する。その中心として、界面活性剤やハイドロゲル様の高分子樹脂等のデザインと合成を展開して行く。以上、最初の申請書の研究計画に従って研究の推進に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用することとなった研究費は、当該年度の研究費配分額が初期に定まらなかった事で高額のキラル物質や分析カラムの購入を見合わせる等の事情によって発生したもので、24年度において、光学活性関係の研究に必要な物品の購入に充てる。これによって、申請書における当初の研究計画のうち、光学活性イノシトール中間体の効率的合成を確立する。この結果を基に、イノシトールリン酸やイノシトールリン脂質類の短工程全合成を進める。全合成研究には、高価なキラルな材料はじめいくつかの特別な試薬を購入する。
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