研究実績の概要 |
昨年度の継続研究となったビャクジュツ(Atracylolides macrocehara)に見いだされた新規オーキシン極性移動阻害物質の単離、構造決定実験を実施した。その結果、当該阻害物質は、酢酸エチル可溶中性画分に分画され、各種クロマトグラフィーを用いた精製操作を繰り返した結果、無色~淡黄色の油状物質として単離することに成功した。質量スペクトルの結果から、当該阻害物質は分子量232であることが示された。続いてNMRによる構造解析に供されたが、現在までその化学構造の決定には至らなかった。4ヶ年にわたって実施された本研究によって、新規オーキシン極性移動阻害物質として、新規化合物であるα-methylene-γ-lactone構造を有するartabolideと命名した3-hydroxy-4,6,7(H)-germacra-1(10),11(13)-dien-6,12-olideが見出され、さらにX線結晶構造解析とMosher’s methodを一部修正した方法によって、そのabsolute configurationおよびspatial conformationは3R, 4S, 6R, 7Sでchair-chair form を取ることが明らかとなった。dehydrocostus lactoneすなわちdecahydro-3,6,9-tris-methylene-azulenol(4,5-b)furan-2(3H)-oneが、また既知化合物である4-hydoraxy-β-thujoneを新規オーキシン極性移動阻害活性物質として単離・同定することに成功した。artabolideの作用メカニズムについては未だ明らかではないが、黄化エンドウ芽生えを用いた実験系において、そのオーキシン極性移動関連遺伝子であるPsPINsの発現に影響することが示された。
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