研究課題/領域番号 |
23510262
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西山 繁 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20137988)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 有機電気化学 / 陽極酸化 / ダイアモンド電極 / メトキシラジカル / インドール / リカリンA / 超原子価ヨウ素試薬 / O-メチルタリブリン |
研究概要 |
新規医薬品のリードとなる低分子量天然・非天然生物活性有機化合物は、様々な感染症あるいは薬剤耐性菌・ウイルスの出現により,とみに需要が増しつつある。そのような背景の下、報告者は有機電気化学の手法を活用した天然物をもしのぐ高活性を示す生物活性物質の創成を目標として、研究を推進してきた。通常のケミカルな合成では最終段階において触媒等に用いてきた残存金属の除去が大きな課題となっているのに対し、電気エネルギーを用いる電極反応はクリーンな有機合成の手法としてその開発・展開が期待されている。本年度においては、既に申請者によって開発された陽極酸化によって発生する超原子価ヨウ素試薬の新しい活用法として、インドール化合物を基質とした酸素官能基の導入を伴う分子内ピロール環構築法を提案し、天然物合成を行うことでその有用性を実証することができた。なお、本研究は有機合成化学の有力な学術誌に招待投稿を依頼された。また、ホウ素をドープしたダイアモンド電極を活用する電極合成について、メタノール中で陽極酸化を行うとメトキシラジカルの発生がこれまで想定されていたが、本研究でESR スペクトルを測定することでラジカルの存在を初めて実証することができた。さらに、本陽極酸化法を利用することで生物活性ネオリグナンであるリカリンA の改良合成を達成するとともに、予備的アッセイにおいて新規生物活性が期待される酸化成績体を高収率で合成することができた。本研究は、インパクトファクターの高い学術誌において公刊することとなった。その他、含光学活性キノリンジアリールエーテル化合物であるO-メチルタリブリンの光学活性体の全合成を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要でも述べたように、主立ったものとして1)電気化学的に発生させた超原子価ヨウ素の新しい利用法の開発および天然物合成による有用性の実証、2)ダイアモンド電極によるメトキシラジカルの発生の検証と生物活性物質の改良合成への応用、3)ジアリールエーテル型光学活性天然物等の研究を達成している。1)および2)については、有力な学術誌に投稿し、既に掲載に向けて受理されている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の方針どおり、有機電気化学の生物活性物質創成への活用の研究を強力に推進していく。23年度では主として、当初予定の2課題を強力に行ったため,残る1課題を24年度に行うこととした。現段階では新規化合物の合成に力点が置かれているが、24年度以降は新規生物活性を見出すための評価を平行して行っていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、23年度と同様に新規物質の合成とともに生物活性を検索するための物質調製に充当していくものとし、当初の予定通りの使途を考えている。なお、上述の通り23年度にやり残した課題分が23年度に残った予算に相当するため、24年度にこの課題を継続して行うものとし,24年度申請予算とあわせてその使用を希望している。
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