研究課題/領域番号 |
23510262
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西山 繁 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20137988)
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キーワード | 有機電気化学 / グリコシル化反応 / 電解酸 / BDD電極 / ジアリールエーテル / 骨芽細胞 / 骨粗鬆症 / ジアリールヘプタノライド |
研究概要 |
前年度に引き続き、有機電気化学によって発生する特異な反応活性種の活用とそれを利用した有用な天然・非天然型生物活性物質の創製に取り組んできた。本年度は、糖基質について研究を進めてきた。その1として、新しいグリコシル化反応を開発するために以前報告者により見出されたように、電極素材に依存して芳香族ベンジルエーテル誘導体がベンツアルデヒドおよびジエノン成績体を生成することを利用してグリコシルドナーの発生に利用することとした。適切に官能基化されたベンジル基をアグリコンとして、アルコールの存在下に陽極酸化に付したところ、目的とするグリコシル化反応を達成することが出来た。継続して、その反応の詳細を検討しているが、電解反応によって生成する電解酸が真の活性種であり、通常のプロトン酸とは明らかに異なる挙動を示すことが判った。その2として、糖の立体化学をアグリコン部分に転写して新しい不斉導入反応を試みた。すなわち、芳香環を直接糖のアノマ-位に結合させたC―グリコシドに対してホウ素をドープしたダイヤモンド電極(BDD電極)による陽極酸化を行い、ジエノン体を合成した。これに対して、1,2-付加反応あるいは接触還元を行うことでsp3炭素を導入して、不斉導入の効果を評価した。 また、天然に産するジアリールエーテル型化合物が顕著な生物活性を示すことから一連の関連物質の合成研究を行っている中でジアリールヘプタノライドの一種より強力な骨芽細胞分化誘導の活性を見出し、関連化合物の評価も合わせて行った結果、骨粗鬆症治療薬のリードとしての可能性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに達成してきたフェノール酸化の手法によるジアリールエーテルおよびスピロジエノン化合物の合成に加えて、電気化学的に発生させた超原子価ヨウ素試薬の活用、BDD電極による有機電気化学の汎用性を提案してきたが、現段階ではそれを糖誘導体に拡張知ることが出来た。さらに,ジアリールヘプタノライドの合成により新しい骨粗鬆治療薬の可能性を示すことが出来た。さらに新しい電解還元の反応装置の導入も行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
25年度についてもこの方向性を継続して研究を推進していく。さらに、超原子価ヨウ素およびBDD電極の新しい活用について検討を重ねていく。BDD電極の反応について、これまでにメトキシラジカルの存在を明らかにしてきたが、水系についても反応活性種の特徴あるいは反応性を検討する。ジアリールヘプタノライド類については、より強力な活性物質を創製する目的で構造活性相関に関する研究を行う。とくに、環のサイズと活性に関する関連性などを題材として、環構築の反応性の相違と、活性発現の必須官能基の配置と種類など、より詳細に検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として合成に関する消耗品(電極、試薬など)の購入を計画しています。11月に開催予定の第11回国際有機反応化学シンポジウム(台北)への参加により本研究を紹介するため旅費に充てたいと考えております。
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