研究課題/領域番号 |
23510264
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
春木 満 日本大学, 工学部, 教授 (30273593)
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キーワード | 3本鎖DNA / ペプチド / 合成レセプター / DNAタグ / コンビナトリアルライブラリー |
研究概要 |
疾病関連蛋白質等の標的分子を特異的に認識する分子は,医薬品やバイオセンサーへの応用が期待される。このような化合物を得る方法として,合成レセプターライブラリーが用いられる。合成レセプターは,足場となる構造の上に,ペプチド鎖などを複数結合したものであり,標的分子に対して標的分子に対して複数個所で結合し選択性・親和性を高めている。しかし,合成レセプターは連結したペプチド配列を区別できないため,異なった配列のペプチドを連結したライブラリーを作成した場合,セレクションされた分子のペプチド配列を個別に同定することは困難である。本研究では、足場として3本鎖DNAを利用し,3本のランダム配列ペプチドを連結したコンビナトリアル合成レセプターライブラリーの開発を目的とした。方法としては,3本鎖を形成する各1本鎖DNA(dY・dR・dT)の一方の端にアミノ酸を付加し,もう一方の端にそのアミノ酸に対応したDNAタグを付加する。これにより付加するアミノ酸の同定が可能となる。 前年度,ssDNA ligaseを用いて1本鎖DNAへのDNAタグの付加を試みたが,連結の効率が低いことが判明した。そこで今年度は相補鎖を加えて2本鎖とし,T4 DNA ligaseにより連結することを試みた。1本鎖DNAとその相補鎖,DNAタグとその相補鎖(3’ビオチン化)をそれぞれアニーリングした後, 4℃で一晩連結反応を行った。次にタグ配列を連結したDNAをStreptavidin Magnetic Beadsに結合させた。タグにはBanII認識配列を導入してあり,BanII処理によりタグ結合断片をDNAをビーズから回収した。断片の回収は電気泳動により確認した。付加したDNAタグの切断面に新たなDNAタグを付加させることが可能であり,タグ連結方法の目途をつけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画では,DNAへのアミノ酸の付加,DNAタグの付加,および3本鎖DNA形成,ライブラリー作成,および作成したライブラリーを用いたスクリーニングまでを行う予定であった。しかしながら,CircLigase ssDNA LigaseによるDNAタグの付加の効率が予想より低かったため,2本鎖での連結に方針を変更した。そして,部分的に2本鎖とし,DNAタグの付加後に容易に1本鎖にできるような配列デザインを試みた。まず,DNAと部分的に相補的な部分を有するヘアピン状DNAをT4 DNA Ligaseを用いて連結し,余分な部分を制限酵素で切断除去するという方法を試みた。この方法ではヘアピン部分が制限酵素により切断されないことが判明したため,通常の2本鎖で連結する方法に再度方針を変更した。このように,DNAタグ連結についての試行錯誤に時間を要したため,ライブラリー作成まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
通常の2本鎖で連結する方法でタグ付加が行えることを確認したので,今年度はまずライブラリー作成を行う。具体的には,まずタグ配列を連結したDNAをStreptavidin Magnetic Beadsに結合させる。タグには制限酵素認識配列を導入しておき,制限酵素処理によりタグ結合断片をDNAをビーズから回収する。付加したDNAタグの切断面に新たなDNAタグを付加する。これをアミノ酸の付加と連動して行い,3本鎖DNA形成によりライブラリーを作成する。さらに,作成したライブラリーを用いて,D-Ala-D-Ala,細胞表面,NF-kB,リゾチームなどの分子を標的としたセレクションを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は,反応条件検討のためのオリゴDNAなどの試薬を主に購入した。また,アミノ酸付加についての試薬も一部購入した。セレクションは行わなかったため,それに使用する試薬類は購入しなかった。その結果,未使用の研究費が若干生じたが,次年度の研究費とあわせて,ライブラリー作成,セレクションの実験に使用する予定である。
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