研究課題/領域番号 |
23510267
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
境 晶子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (30225750)
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研究分担者 |
田中 覚 大阪医科大学, 医学部, 助教 (50595741)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 抗癌剤耐性 / プロテオミクス / HSPB1 / リン酸化 |
研究概要 |
HSPB1の翻訳後修飾とオリゴマー構造 5-FU耐性大腸癌細胞のプロテオーム解析によって,耐性獲得と関連するタンパク質の一つとしてHSPB1を見出した。HSPB1はモノマー・ダイマーから800kDa以上の巨大オリゴマー構造をとること,そのオリゴマー化の調節にリン酸化が関与していることが報告されているが,その詳細は不明である。耐性獲得細胞におけるHSPB1のリン酸化部位はMALDIによって決定していたので,リン酸化部位認識抗体を用いた1D,2D-Western blot法を行い,Ser-15とSer-82がmajor型でさらにSer-78もリン酸化されたものもminor型として検出できた。次に耐性獲得とオリゴマー構造の関連を探るため,23年度はまずオリゴマーを分離するためにBlue Native-PAGEを検討し,種々の大きさのオリゴマーのリン酸化状態を解析できた。巨大オリゴマー構造を維持できる条件下でLysisしたものをBlue-Native PAGEによって分離,二次元目にSDS-PAGEを行うことでダイマーから800kDa以上の巨大オリゴマーを検出でき,それらオリゴマーが異なるリン酸化を受けていることを明らかにした。結果は分子生物学会年会で発表した。5-FUとは別の作用機序の抗癌剤パクリタキセル耐性株を用いたプロテオーム解析も進んでいる。患者血清を用いた耐性マーカーの可能性 5-FUを第一選択薬として用いる大腸癌・乳癌で耐性を示した患者血清を用いてHSPB1をELISA法によって定量した。耐性獲得と血清中のHSPB1量にある傾向が見られたので,さらに患者血清の数を増やし耐性マーカーとなりうるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は次の二つである。1. HSPB1, CK8が抗癌剤耐性獲得の機構においてどのような役割を果たしているかを,翻訳後修飾・オリゴマー構造・他の蛋白質との相互作用を解析することで明らかにする。2. これらタンパク質の耐性獲得マーカーとしての有用性の確認。前者については,耐性株におけるオリゴマーの状態とその時どのリン酸化部位がリン酸化を受けているかを明らかにした。また後者については,5-FUを治療に用いて耐性を獲得し他剤に変更した患者の各治療ステップの血清を用い,血清中のHSPB1の量をELISA法で測定する方法を確立し,興味ある変動を観察している。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、以下の計画である。1.リン酸化の状態を解析する手法として,リン酸化の部位の違いも移動度に反映できるPho-tagアクリルアミド電気泳動を用いる。予備実験において,HSPB1のリン酸化部位の違いで異なる移動度を示すことを確認している。このPhos-tagアクリルアミド泳動と等電点電気泳動及びBlue-Native PAGEを組み合わせた解析を行うことで,HSPB1のオリゴマー構造とリン酸化される部位の関係を明らかにする。2.免疫沈降法を用いてHSPB1と相互作用しているタンパク質を同定し,それらタンパク質がどのサイズのオリゴマーと相互作用しているのかを明らかにする予定である。3.耐性マーカーに関しては,患者血清のサンプル数を増やし詳細な測定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は上記研究を行う上で必須となる消耗品に充てる予定である。また,次年度使用額の30,857円は,次年度新たにPhos-tag関連試薬を購入する費用に充てるため繰り越した。
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