研究課題/領域番号 |
23510267
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
境 晶子 大阪医科大学, 医学部, 講師 (30225750)
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研究分担者 |
田中 覚 大阪医科大学, 医学部, 助教 (50595741)
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キーワード | 抗癌剤耐性 / プロテオミクス / HSPB1 / サイトケラチン / 耐性獲得マーカー |
研究概要 |
抗癌剤5-fluorouracil (5-FU)に対する耐性を獲得した DLD-1細胞株を用いたプロテオーム解析によって,耐性獲得と関連してその発現が増加するタンパク質の一つにストレス応答タンパク質であるHSPB1を同定した。HSPB1はモノマー・ダイマーから500 kDa以上の高分子オリゴマー構造をとること,高分子オリゴマーは様々なタンパク質と相互作用してその機能を発揮すること,オリゴマー化の調節にリン酸化が関与していることが報告されているが,その詳細は不明である。相互作用するタンパク質を同定するために抗HSPB1抗体を用いた共免疫沈降実験を行ったところ,SDS-PAGEで数本のバンドを検出しIn-gel消化後MALDI TOF/TOFによる質量分析の結果,細胞骨格蛋白質であるサイトケラチン(CK)のサブタイプ数種類を同定した。これらはプロテオーム解析において5-FU耐性獲得で発現が変動したタンパク質であり興味深い結果である。一方,タキサン系抗癌剤であるPaclitaxel耐性株でのプロテオーム解析及び耐性獲得で増加したタンパク質のsiRNAによる確認実験を継続中である。HSPB1の耐性獲得マーカーとしての有用性確認では,タキサン系抗癌剤の後に5-FUを用いた患者血清などを用いて血清中HSPB1濃度を測定し,耐性獲得の有無による値の変動が観察されたが検体数が少ないのが現状の問題点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度より遅れていた「相互作用するタンパク質の同定」を行い研究実績で示した結果を得たが,更なる検討が必要である。また,耐性獲得マーカーとしての有用性確認は,患者血清のサンプル数を増やし更に測定を行う。
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今後の研究の推進方策 |
共免疫沈降実験によって興味ある結果が得られたが,今年度行った方法では相互作用するタンパク質を網羅的に同定できていない可能性もある。さらに網羅性の高い同定手段として,免疫沈降した試料をトリプシン消化後直接LC-MSで同定することを試みる。また,耐性獲得マーカーに関しては更に患者血清を集め解析を行うことと患者の組織切片の免疫染色を行い組織中のHSPB1の量を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に計画していた「耐性獲得マーカーとしての有用性の検討」の実験であるが,集めた患者血清を用いてHSPB1の定量を行ったところ興味ある結果が得られた。しかし,患者血清の収集が予定より遅れていること,第二のマーカーの実験系確立が遅れたことなどから未使用額が生じた。 このため,患者血清の更なる収集を行いつつ上記実験を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることにしたい。
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