研究課題/領域番号 |
23510268
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
石黒 京子 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (70151363)
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研究分担者 |
奥 尚枝 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (90281518)
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キーワード | アレルギー / 血流量 / ストレス / マウス / in vivo |
研究概要 |
アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患は、ストレスにより重症化・再発させることが知られている。しかしこれまでのアレルギーの評価系において、ストレスの病態や要因の併発を反映した評価系は皆無である。そこで本申請では、申請者らの先のアレルギー病態におけるマウスの血流に関する研究成果をもとに、新たに血流量を指標としたストレスが関与するアレルギーのin vivo評価系の開発を目的とした。さらにこの方法を用いて新規メカニズムによる副作用の少ない阻害物質を天然から探索することを目指した。 卵白リゾチーム(HEL)を用いた感作により、マウスの末梢血管の血流量はアレルギーの開始段階(induction phase)から9日間で血圧の関与無しに、平常血流量の約70%まで有意に再現性よく低下することは先に明らかにしている。そこで23年度はストレスのみによる血流量への影響を検討し、ストレス負荷マウスの血流量が無処置マウスに比較して約80%まで有意に低下することを明らかにした。さらにこのときの血中コルチゾール量も有意に増加することを確認した。 そこで感作マウスに心理的ストレスを負荷し、血流量に及ぼす影響を観察したが、感作マウスとストレス負荷感作マウスの間に有意差が確認できなかった。両者間の有意差は実験に不可欠であることから、抗原量を検討した。 24年度は最初の半量(12.5μg)で感作が成立し、induction phaseにおける血流量低下を再現性良く確認できること明らかにした。さらにこの抗原量で感作したマウスにストレスを負荷し、両者の血流量低下において確実に有意差が出ることを確認した。一方で、これまでのストレス負荷法の検討を行い、苦痛を減らし実験時間を最小限にできる実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学における動物実験の規制が厳しくなり、動物の苦痛に最大限に配慮し、実験時間を最小限とすることが求められ、マウスの購入に関する書類の作成が多くなり、実験マウスの入手が困難になった。そこでストレスの負荷方法を当初予定した方法から変更せざるを得なくなり、これらの条件検討を同時に進めたため、研究全体では当初の予定より少し遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ストレスとアレルギーの併発を確実に再現性よく反映する血流を用いた病態モデルマウスが作製できた。今後は作製した病態モデルマウスを用いて、実験の条件設定に改良を加えつつ、実験スケジュールの最短化を行い、最終的に血流量を指標とするin vivoアッセイ系を構築する。さらにこれを用いて天然資源の評価を行い、シーズやリード化合物を探索する。 また上記モデルマウスの血流量低下のメカニズムを解明する。HEL感作のみの血流量低下に深く関与するNO、COX-1、2, ET-1 ,PGI2およびiNOS などが、ストレス負荷した感作マウスではどのように機能するかを明らかにし、両者の血流低下メカニズムの相違を明らかにすることにより、本アッセイ法の位置づけを明確にする。 一方、感作マウスおよびストレス負荷感作マウスからそれぞれ血管内皮細胞を摘出し、得られたタンパク質を用いて蛍光標識二次元 ディファレンスゲル電気泳動法(2D-DIGE法)に準じたプロテオーム解析を行なう。本法は、2種類のサンプルを異なる蛍光色素で標識し、同一ゲル上で二次元電気泳動を行った後、波長を変えてそれぞれのスポットを検出する方法で、泳動の誤差が生じる事なく、2 つのスポットを比較する事ができる。両者の発現量を比較し、ストレスに関連して増加するタンパク質スポットを抽出後、MALDI-TOF- MSにより解析し、標的タンパク質を特定する
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次年度の研究費の使用計画 |
主として消耗品費には必要不可欠の実験動物を充てる。また、一部はマウスの専用ホルダー、病態誘導用の各種試薬、各種阻害剤、ストレスの指標となるコルチゾールや各種サイトカイン定量用の市販のキットおよび、プロテオーム解析関連の固定化pH勾配ゲルや専用蛍光試薬、活性成分の単離・精製に用いる各種クロマト用カラム、樹脂および溶媒、実験器具の購入に充てる。その他、シーズ植物の探索に当たって必要となる天然材料調達の費用などに充てる。謝金:実験補助作業のアルバイト謝礼、外国語論文の校正依頼費への謝金に充てる。旅費:天然資源の調査、採集のための旅費、研究成果発表の目的で国内外の学会参加旅費に充てる。その他:機器分析測定依頼費や、専門機関への測定依頼費に充てる。 未使用金155,000円は、今年度にパソコンの購入を予定していたものであるが、近日に発売が予定されていた上位機種に変更することにより、さらに研究を効果的に進められると考えたため、本機の購入に充てることにする。
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