研究課題/領域番号 |
23510270
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
百瀬 功 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 主席研究員 (10270547)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | プロテアソーム阻害剤 / インビボイメージング |
研究概要 |
1. In vivoイメージングによる腫瘍内プロテアソーム阻害活性測定系の改良これまでプロテアソーム分解性蛍光タンパク質としてサンゴZsGreen蛍光タンパク質とユビキチン化なしにプロテアソームにより分解されるMODCドメインを融合させたタンパク質を発現するヒト胎児腎細胞HEK293を用いて、腫瘍内プロテアソーム阻害活性をin vivoイメージングにて測定してきたが、マウスでの低造腫瘍性のため、実験に適したマウスを作製するのに約40日間が必要であることが問題であった。そこで種々検討を行い、プロテアソーム分解性蛍光タンパク質をモノユビキチンが予め結合したGFPに改変させたタンパク質をヒト大腸がんRKO細胞で発現させ、それをマウスの皮下に移植させたところ移植後17日(HEK293細胞のほぼ半分の時間)で腫瘍が約1,000mm3に達し、大幅な実験時間の短縮を可能にした。2. プロテアソーム阻害剤チロペプチン誘導体の特徴付けこれまでに我々は放線菌Kitasatospora sp. MK993-dF2株の培養液より新規プロテアソーム阻害剤チロペプチンを発見した。このチロペプチンをリード化合物として100種類以上の誘導体を合成し、今回これらの中から2つの誘導体を選び出し、その生物活性について詳細に解析した。このうちの1つはin vitroにおいてbortezomibよりも強いプロテアソーム阻害活性を示した。細胞を用いた解析においては、これらの誘導体は細胞内のプロテアソームを阻害し、各種のプロテアソームの内在性タンパク質の分解を抑制した。またミトコンドリアおよびデスレセプターを介したアポトーシス経路を活性化した。更にこれらの誘導体はヒト多発性骨髄腫皮下移植モデルマウスにおいて明らかな抗腫瘍活性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. In vivoイメージングによる腫瘍内プロテアソーム阻害活性測定系の改良は、予定より早期に達成することが出来た。その理由として、今回改良したプロテアソーム分解性タンパク質が、宿主細胞に対して低ストレス性であっために、プロテアソームの阻害に応じて多量の蛍光タンパク質の蓄積を可能にし、その結果として高い蛍光シグナルおよび高いS/N値を達成できたと考えている。2. プロテアソーム阻害剤チロペプチン誘導体の特徴付けも順調に進んでいる。その理由として、これまでの研究経歴から同種の実験は経験済みであったことと、実験材料としてヒト多発性骨髄腫細胞を選んだ点が上げられる。多発性骨髄腫細胞は浮遊性細胞のため取り扱いが容易であり、大量培養にも向いている。これらが計画どおりに実験を達成できた一因であろうと考える。
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今後の研究の推進方策 |
インビボイメージングを用いた経口投与可能なプロテアソーム阻害剤の開発と抗がん剤としての応用研究を推進するために、下記の実験方策を計画する。<1. チロペプチン誘導体のマウス経口急性毒性の測定>In vivoイメージングにおける薬剤投与量の決定のために、マウスにおける急性毒性を調べる。ICRマウスに各誘導体を経口投与し、マウスの生死に基づきLD50値(50% Lethal Dose)を決定する。また体重変化および体調を一定期間観察した後、解剖観察および各臓器重量を計測することにより毒性を調べる。<2. In vivoイメージングを用いたチロペプチン誘導体のマウス腫瘍内プロテアソーム阻害活性>本年度樹立したプロテアソーム分解性蛍光タンパク質発現細胞をヌードマウスに移植し、腫瘍の大きさが1,000-1,500 mm3になったところで、各誘導体を経口投与する。24時間後に腫瘍内のプロテアソーム分解性蛍光タンパク質の蓄積をin vivoイメージングにて測定する。<3. 経口投与可能なチロペプチン誘導体の最適化>経口吸収性チロペプチン誘導体はプロテアソームとのドッキングスタディーもしくはプロテアソームーチロペプチン誘導体複合体のエックス線結晶構造解析から最適化を行い、経口吸収性の向上および薬物動態が改善を目指した新しい誘導体を創製する。<4. 経口吸収性プロテアソーム阻害剤の抗腫瘍活性>ヒトがん移植マウスモデルにおいて、チロペプチン誘導体の経口投与による抗腫瘍活性を調べる。腫瘍体積、腫瘍重量、腫瘍内プロテアソーム活性など詳細な解析から、新しい経口投与可能な抗がん剤としての可能性を追求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主に、<1. チロペプチン誘導体のマウス経口急性毒性の測定>および<2. In vivoイメージングを用いたチロペプチン誘導体のマウス腫瘍内プロテアソーム阻害活性>を中心に研究を行う。1においては、多数のマウス、サンプルチューブおよび注射筒等の消耗器具が必要になる。2においては、プロテアソーム分解性蛍光タンパク質発現細胞を大量に調整してマウスに移植するため、細胞培養に必要な培地や血清などの培養試薬、培養シャーレやピペット等のプラスチック器具および免疫不全マウスが必要になる。また本年度予定していた<プロテアソーム阻害剤チロペプチン誘導体の特徴付け>において、マウスでの薬物動態や腫瘍内におけるプロテアソーム阻害活性等の生化学的な解析がまだ十分ではないことから追加実験を予定しており、それに必要なHPLCカラムや生化学試薬が必要である。その他として、日本癌学会、がん分子標的治療学会に参加する為の旅費や、論文校正や別刷り代を予定している。
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