研究課題
アザミウマは農薬抵抗性を容易に発達させる難防除害虫であるとともに植物病原ウイルスの媒介虫でもある。植物病害ウイルス媒介虫によって被る経済的損失は近年、上昇の一途をたどっている。植物病害ウイルス媒介虫の中でも農薬抵抗性を高度に発達させた難防除害虫の代表格であるアザミウマ類による激しい食害とウイルス病による二重被害は世界規模で深刻な問題となっている。そのような中で、ウイルス媒介虫であるアザミウマ類の防除においては「近づけない」ことが何より重要である。そこで、本研究においては、アザミウマの行動を制御している植物側因子の解明し、環境にやさしいアザミウマ忌避法の開発にむけた基盤研究を推進することを目的として実施している。従来の虫害研究では実際に被害が生じている作物を用いるのが通例であるが、本研究においてはリソース、関連情報が豊富なモデル実験植物、シロイヌナズナを用いている。これまでの解析から、植物防御を正常に発揮することができないシロイヌナズナ変異体に対するアザミウマの選行性などを明らかとした。加えて、アザミウマが媒介するウイルス病に感染した植物においてもアザミウマの選行性が劇的に変化することを明らかにした。これらの成果に加えて、当該年度は、アザミウマの選行性を制御しうる植物成分の候補についても解析を進めており、これまでにアザミウマの食害を受けた植物体から特異的に放出される匂い成分の同定に成功している。同時に、葉中に含まれる、ある種の成分が低下することにより、アザミウマの行動が変化することを明らかとした。現在、これらの「葉の代謝成分」や「揮発性成分」がアザミウマの行動にどのように影響しうるのかについて解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
農薬抵抗性を高度に発達させた難防除害虫の代表格であるとともに、植物病原ウイルスの媒介虫でもあることが、アザミウマが世界規模で深刻な問題となっている理由である。その問題を解決すべく多くの解析がなされているが、根本的な解決に到る手がかりは得られていない。そのような中で、我々はアザミウマ類の防除においては「近づけない」ことが何より重要であると考え、研究を進めている。このようなアザミウマの行動制御を目指した本研究課題は世界的にみてもユニークなものである。これまでに、モデル実験植物シロイヌナズナにおける実験系により、植物防御を正常に発揮することができないシロイヌナズナ変異体に対するアザミウマの選行性などを明らかとした。加えて、アザミウマが媒介するウイルス病に感染した植物においてもアザミウマの選行性が劇的に変化することを明らかにした。更に、アザミウマの選行性を制御しうる植物成分の候補についても解析を進めており、これまでにアザミウマの食害を受けた植物体から特異的に放出される匂い成分の同定に成功している。同時に、葉中に含まれる、ある種の成分が低下することにより、アザミウマの行動が変化することを明らかとした。今後、これら成分を利用したアザミウマの行動制御が可能となるかもしれない。
これまでに、モデル実験植物シロイヌナズナにおける実験系により、植物防御を正常に発揮することができないシロイヌナズナ変異体に対するアザミウマの選行性などを明らかにした。加えて、アザミウマが媒介するウイルス病に感染した植物においてもアザミウマの選行性が劇的に変化することを明らかにした。また、この時に、ウイルス感染により変化する植物中での防御レベルの変化をアザミウマは敏感に感知していることが分かった。以上のことから、植物防御を活用することで、アザミウマの行動を制御できることを示すことができた。更に、アザミウマの選行性を制御しうる植物成分の候補についても解析を進めており、これまでにアザミウマの食害を受けた植物体から特異的に放出される匂い成分の同定に成功している。同時に、葉中に含まれる、ある種の成分が低下することにより、アザミウマの行動が変化することを明らかとした。今後はこれらの「葉の代謝成分」や「揮発性成分」がアザミウマの行動にどのように影響しうるのかについて解析を行って行く予定である。同時に、これまで、用いてきたミカンキイロアザミウマに加えて、他のアザミウマ種についても解析を行い、ミカンキイロアザミウマを用いて明らかにしたことが、他のアザミウマ種にも適応できるのかどうかについても検証を行う予定である。
今年度は研究が順調に進んだために、H24年度繰越金が発生した。次年度が本研究課題の最終年度となるために、次年度は上半期までに、計画的な予算の消化を行う予定である。同時に、これまで得られた成果について、積極的に発表を行いたい。学会出席や、論文の校閲などにも、H24年度繰越金を用いる予定である。
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Plant Cell Physiol
巻: 53 ページ: 204-212
doi: 10.1093/pcp/pcr173.
Plant Cell Physiol.
巻: 53 ページ: 1432-1444
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