• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

アザミウマの行動制御を標的とした植物防御機構に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23510271
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

安部 洋  独立行政法人理化学研究所, 実験植物開発室, 専任研究員 (90360479)

研究分担者 下田 武志  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 病害虫研究領域, 主任研究員 (20370512)
キーワード植物防御 / 虫害 / 行動制御
研究概要

アザミウマは農薬抵抗性を容易に発達させる難防除害虫であるとともに植物病原ウイルスの媒介虫でもある。植物病害ウイルス媒介虫によって被る経済的損失は近年、上昇の一途をたどっている。植物病害ウイルス媒介虫の中でも農薬抵抗性を高度に発達させた難防除害虫の代表格であるアザミウマ類による激しい食害とウイルス病による二重被害は世界規模で深刻な問題となっている。そのような中で、ウイルス媒介虫であるアザミウマ類の防除においては「近づけない」ことが何より重要である。そこで、本研究においては、アザミウマの行動を制御している植物側因子の解明し、環境にやさしいアザミウマ忌避法の開発にむけた基盤研究を推進することを目的として実施している。従来の虫害研究では実際に被害が生じている作物を用いるのが通例であるが、本研究においてはリソース、関連情報が豊富なモデル実験植物、シロイヌナズナを用いている。これまでの解析から、植物防御を正常に発揮することができないシロイヌナズナ変異体に対するアザミウマの選行性などを明らかとした。加えて、アザミウマが媒介するウイルス病に感染した植物においてもアザミウマの選行性が劇的に変化することを明らかにした。これらの成果に加えて、当該年度は、アザミウマの選行性を制御しうる植物成分の候補についても解析を進めており、これまでにアザミウマの食害を受けた植物体から特異的に放出される匂い成分の同定に成功している。同時に、葉中に含まれる、ある種の成分が低下することにより、アザミウマの行動が変化することを明らかとした。現在、これらの「葉の代謝成分」や「揮発性成分」がアザミウマの行動にどのように影響しうるのかについて解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

農薬抵抗性を高度に発達させた難防除害虫の代表格であるとともに、植物病原ウイルスの媒介虫でもあることが、アザミウマが世界規模で深刻な問題となっている理由である。その問題を解決すべく多くの解析がなされているが、根本的な解決に到る手がかりは得られていない。そのような中で、我々はアザミウマ類の防除においては「近づけない」ことが何より重要であると考え、研究を進めている。このようなアザミウマの行動制御を目指した本研究課題は世界的にみてもユニークなものである。これまでに、モデル実験植物シロイヌナズナにおける実験系により、植物防御を正常に発揮することができないシロイヌナズナ変異体に対するアザミウマの選行性などを明らかとした。加えて、アザミウマが媒介するウイルス病に感染した植物においてもアザミウマの選行性が劇的に変化することを明らかにした。更に、アザミウマの選行性を制御しうる植物成分の候補についても解析を進めており、これまでにアザミウマの食害を受けた植物体から特異的に放出される匂い成分の同定に成功している。同時に、葉中に含まれる、ある種の成分が低下することにより、アザミウマの行動が変化することを明らかとした。今後、これら成分を利用したアザミウマの行動制御が可能となるかもしれない。

今後の研究の推進方策

これまでに、モデル実験植物シロイヌナズナにおける実験系により、植物防御を正常に発揮することができないシロイヌナズナ変異体に対するアザミウマの選行性などを明らかにした。加えて、アザミウマが媒介するウイルス病に感染した植物においてもアザミウマの選行性が劇的に変化することを明らかにした。また、この時に、ウイルス感染により変化する植物中での防御レベルの変化をアザミウマは敏感に感知していることが分かった。以上のことから、植物防御を活用することで、アザミウマの行動を制御できることを示すことができた。更に、アザミウマの選行性を制御しうる植物成分の候補についても解析を進めており、これまでにアザミウマの食害を受けた植物体から特異的に放出される匂い成分の同定に成功している。同時に、葉中に含まれる、ある種の成分が低下することにより、アザミウマの行動が変化することを明らかとした。今後はこれらの「葉の代謝成分」や「揮発性成分」がアザミウマの行動にどのように影響しうるのかについて解析を行って行く予定である。同時に、これまで、用いてきたミカンキイロアザミウマに加えて、他のアザミウマ種についても解析を行い、ミカンキイロアザミウマを用いて明らかにしたことが、他のアザミウマ種にも適応できるのかどうかについても検証を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

今年度は研究が順調に進んだために、H24年度繰越金が発生した。次年度が本研究課題の最終年度となるために、次年度は上半期までに、計画的な予算の消化を行う予定である。同時に、これまで得られた成果について、積極的に発表を行いたい。学会出席や、論文の校閲などにも、H24年度繰越金を用いる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Antagonistic plant defense system regulated by phytohormones assists interactions among vector insect, thrips and a tospovirus.2013

    • 著者名/発表者名
      Abe H, Tomitaka Y, Shimoda T, Seo S, Sakurai T, Kugimiya S, Tsuda S, Kobayashi M
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol

      巻: 53 ページ: 204-212

    • DOI

      doi: 10.1093/pcp/pcr173.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification of natural diterpenes that inhibit bacterial wilt disease in tobacco, tomato and Arabidopsis2013

    • 著者名/発表者名
      Seo, S., Gomi, K., Kaku, H., Abe, H., Seto, H., Nakaho, K., Nakatsu, S., Neya, M., Kobayashi, M., Ichinose, Y., Mitsuhara, I., and Ohashi, Y.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 53 ページ: 1432-1444

    • DOI

      doi: 10.1093/pcp/pcs085.

    • 査読あり
  • [学会発表] ハモグリバエ、アザミウマ抵抗性解明を目指した実験植物シロイヌナズナの利用2013

    • 著者名/発表者名
      安部洋、下田武志、立石剣、冨高保弘、瀬尾茂美、釘宮聡一、櫻井民人、津田新哉、小林正智
    • 学会等名
      応用動物昆虫学会
    • 発表場所
      日本大学湘南キャンパス(神奈川県藤沢市)
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] シロイヌナズナ-アザミウマ間の相互作用とトスポウイルス媒介に関する研究2013

    • 著者名/発表者名
      安部洋、富高保弘、瀬尾茂美、下田武志、釘宮聡一、櫻井民人、津田新哉、小林正智
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] Tritrophic interactions among Arabidopsis, thrips and tospovirus2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi ABE, Yasuhiro TOMITAKA, Takeshi SHIMODA, Shigemi SEO, Tamito SAKURAI, Soichi KUGIMIYA, Shinya TSUDA, Masatomo KOBAYASHI
    • 学会等名
      International Society for Molecular Plant-Microbe Interactions
    • 発表場所
      京都国際会議場(京都市左京区)
    • 年月日
      20120729-20120802
  • [学会発表] ANTAGONISTIC PLANT DEFENSE SYSTEM REGULATED BY PHYTOHORMONES ASSISTS INTERACTIONS AMONG VECTOR INSECT, THRIPS AND A TOSPOVIRUS2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi ABE, Yasuhiro TOMITAKA, Takeshi SHIMODA, Shigemi SEO, Tamito SAKURAI, Soichi KUGIMIYA, Shinya TSUDA, Masatomo KOBAYASHI
    • 学会等名
      シロイヌナズナ国際会議
    • 発表場所
      Conference Center ‘De Hof van Wageningen, ウイーン, オーストリア
    • 年月日
      20120703-20120707

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi