研究課題/領域番号 |
23510275
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
木島 龍朗 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (50272084)
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キーワード | フェロセン修飾補酵素 / NAD / アゾ還元酵素 / フェロセン / 補酵素再生系 |
研究概要 |
研究実施計画にしたがって、1)フェロセン修飾補酵素の合成 2)修飾補酵素の活性評価 3)補酵素再生系を有するアゾ分解反応系の最適化 の3項目について検討を行った。フェロセン修飾補酵素の合成において、NAD+ のアデニン環N6位にフェロセンを4炭素鎖で導入したN6-フェロセニルブタノイルNAD+ の合成に成功した。得られたフェロセン修飾補酵素を用いて、アルコール脱水素酵素によるエタノールの酸化を行い、分光光度計にて340nmに現れる還元体(フェロセン修飾NADH)の吸光度変化を補酵素活性として評価した。反応開始後、340nmにNADH生成に起因する特性吸収が認められ、フェロセン導入後も補酵素活性を保持していることを確認した。合成されたフェロセン修飾NAD+ を用いて、補酵素還元酵素を用いた補酵素再生系の検討(2酵素によるアゾ分解反応)を行った。連携研究者から提供されたアゾ還元酵素(AZR)を用いて、AZRによるアゾ色素(メチルレッド)の還元(分解)とアルコール脱水素酵素によるエタノールの酸化をカップリングさたところ、430nmにおけるメチルレッドの吸収が減少し、目視においても確認できる退色が確認された。また同反応系を用いてアゾ色素の基質特異性検討も行い、アゾ基を有さないインディゴカルミンにおいても分解活性が見られることを見出した。 今回、合成に成功したフェロセン修飾NAD+ は、アゾ還元酵素およびアルコール脱水素酵素のいづれにおいても補酵素活性を示し、活性部位における立体障害や阻害効果は認められないこと,アゾ基以外の還元反応も触媒することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内での達成目標のうち、連携研究者から提供を受ける酵素を用いて微生物による分解反応全体の中から酵素反応の部分に焦点を絞り,『電極における補酵素再生システムを有するアゾ分解酵素反応系の開発』をめざす中で、「フェロセン修飾補酵素の合成」,「補酵素再生系を有するアゾ分解反応系の最適化」を目標としているが、当初計画していた化合物が予定通りに合成できていない。そこで可能性のあるフェロセン修飾補酵素に合成目標を絞り、それを用いたアゾ分解反応系とのカップリングを検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
フェロセン修飾補酵素の合成を4炭素鎖,12炭素鎖に絞り,検討を進める。合成したフェロセン修飾補酵素は、研究計画に沿って補酵素再生に電極を用いたアゾ色素(メチルレッド)の分解反応,ポテンショスタットを用いた電極での補酵素還元反応,酵素単体での電極における補酵素作用機構を明らかにする。また酵素の固定化検討を行い、酵素電極の作製も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度に購入したQCMの消耗品類(電極やセル等)や引き続き修飾補酵素合成に必要な試薬・溶媒,ガラス器具類を購入予定。また研究連携者(北海道大学)との研究打合せ,国内学会発表(日本生物工学会大会:広島市),国際学会発表(アメリカ化学会年会:インディアナポリス)および論文投稿費用(投稿代,論文校正代)を考えている。
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