研究課題/領域番号 |
23510276
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須磨岡 淳 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (10280934)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 希土類 / リン酸化 / シグナル伝達 / ケミカルバイオロジー / 分析科学 / チロシン / キナーゼ |
研究概要 |
当初の計画に従い、ファージディスプレイ法を用いてリン酸化チロシン残基を認識するオリゴペプチド-Tb(III)錯体を探索したところ、数種類のペプチドが選択されてきた。中でも、ISPSHSQAQADLという配列を有するペプチドがリン酸化チロシンペプチドの検出に特に有望であった。しかし、NMRを用いてTb(III)とオリゴペプチドとの相互作用を検討した結果、直接的な相互作用が確認できなかった。そこで、タンパク質(今回はHuman Src由来のタンパク質)にシステインを導入し、Tb(III)複核錯体をこのシステイン残基に反応させる系を設計した。今年度は、システインが導入されたタンパク質の発現・精製に成功し、これらのタンパク質がリン酸化酵素(Csk)により目的通りにリン酸化されることも確認した。また、ブロモアセチル化された蛍光色素と、これらの発現タンパク質を反応させた結果、目的のシステイン残基が選択的に反応することが明らかになった。一方、Tb(III)複核錯には、しばしば生体物質のラベル化等で利用されるHuisgen反応に対応するためにアセチレン残基の導入を行った。 また、これまでに知られている数種類のタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)とその基質ペプチドについて、Tb(III)錯体存在下、酵素-基質の組み合わせを種々変化させ発光強度を測定した。その結果、キナーゼとその特異的な基質ペプチドの組み合わせた場合にのみTb(III)錯体からの発光強度が上昇することが確認された。さらに、数種類の阻害剤について発光強度に対する影響を検討したところ、これまでに知られている阻害剤の特異性と一致する結果が得られた。これらの結果は、見出したTb(III)錯体がキナーゼ阻害剤のスクリーニングに使用可能であることを示す結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tb(III)錯体からの発光により、特定のタンパク質中の特定のチロシン残基のリン酸化をリアルタイムに観測するために必要なTb(III)錯体およびタンパク質を、それぞれ調製することに成功した。また、既知のチロシンキナーゼ、基質ペプチド、および阻害剤を用いて、Tb(III)錯体がチロシンキナーゼ阻害剤の1次スクリーニングに有用であることを示した。これらの実験項目は、本研究目的を実現するためには必須であり、得られた成果についても本計画の妥当性を示すものであった。したがって、本研究は、ほぼ計画通りに進行していると考えられる。 一方、当初計画していたファージディスプレイ法を用いた、チロシンのリン酸化に発光応答するオリゴペプチド-Tb(III)錯体の選択については、有望なペプチドは得られたものの、化学的な視点からその相互作用形式を決定するには至らなかった。このペプチドを配位子とする系については、より詳細な検討が必要であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究により調製したTb(III)錯体ならびにタンパク質を用いて、Tb(III)錯体で修飾されたタンパク質を作成し、タンパク質中の特定のチロシン残基のリン酸化を、Tb(III)錯体からの発光によりリアルタイムで観測することが可能であることを実証する。また、検出したい目的タンパク質を直接リン酸化するのではなく、目的タンパク質に対する抗体やリガンドに対して、これらの錯体を修飾することによって、目的タンパク質のチロシンリン酸化が検出可能出るかについても検討を行う。 また、Tb(III)錯体のリン酸化チロシンに対する選択的応答性を活用し、電気泳動後のリン酸化タンパク質の簡便な検出法についても検討する。抗体を利用した染色とはことなり、錯体は比較的分子量が小さいために、電気泳動後のゲルを直接染色してチロシンがリン酸化されたタンパク質を検出することが可能であると予想される。 オリゴペプチド-Tb(III)錯体に関しては、発光寿命の測定などNMR以外のデータを測定し、その相互作用様式の解明を試みる。 もちろん、上述の研究と平行してTb(III)錯体の配位子の最適化を行い、より高機能を有する錯体の探索を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はタンパク質に対する実験が主であるため、タンパク質の調製・精製に必要なキット類、電気泳動関連試薬、HPLCカラムなどの試薬類や消耗品を主として購入する予定である。
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