研究課題
本研究初期の組換えヒトSTAT3を用いたin vitroの研究結果から、ベンダムスチンはシステインのチオール基を介した共有結合複合体を形成することによって、STAT3-SH2アンタゴニストとして作用することが示唆された。そこで細胞内におけるベンダムスチンのSTAT3への作用を解析した。STAT3が恒常的に活性化しているヒト乳がん細胞株であるMDA-MB-468細胞にベンダムスチンを接触させ、核抽出液中のSTAT3によるDNA結合率をELISA法で測定した。その結果ベンダムスチンによりDNA結合率が低下し、また不活性代謝産物HP2では低下しなかった。さらにReal time PCR法によって、STAT3の標的遺伝子である、Survivin等のmRNAレベルを測定した結果、上記DNA結合率と同様にベンダムスチン処理細胞で低下し、HP2処理では変化が見られなかった。次にベンダムスチンのSTAT3-SH2アンタゴニスト活性に影響を与えないカルボン酸部位に対して、ポリエーテルリンカーを介してビオチンを導入したビオチン化ベンダムスチンを調製し、細胞内におけるSTAT3との相互作用の検討を行った。ビオチン化ベンダムスチンに接触させたMDA-MB-468細胞の細胞抽出液を用いて、抗STAT3抗体によってSTAT3を免疫沈降し、streptavidin-HRPによるブロッティングを行った。その結果、STAT3のバンドの位置にstreptavidin-HRPが反応したことから、細胞内STAT3にビオチン化ベンダムスチンが共有結合していることが示唆された。さらにこれらのバンドのインテンシティーは過剰量のベンダムスチン処理で競合的に低下し、HP-2では低下しなかった。以上の結果からベンダムスチンは細胞内STAT3に直接結合することによって、その機能を抑制していることが示唆された。
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