研究課題/領域番号 |
23510282
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
猪腰 淳嗣 北里大学, 薬学部, 准教授 (30151640)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 感染症 / 抗生物質 / 蛋白質 / 構造活性相関 |
研究概要 |
本研究の目的は、抗結核菌活性を有するペプチド抗生物質のラリアチンをたんぱく質工学の手法を用いて改変し、ラリアチンのアミノ酸配列のうち抗結核活性に強く影響している残基を同定し、新しい抗結核薬を開発するための基盤を得ようとするものである。また、本研究で得られる成果をラリアチンと同様な"投げ縄構造"を有するペプチド化合物の発現に応用し、新しい化合物ライブラリーを構築するための基盤を確立することである。平成23年度は (1) 遺伝子の改変によって作成した変異ラリアチンを効率よく発現するための宿主菌株の育種を行ない、次に(2) (1)で確立した微生物を利用した発現系を用いてラリアチンを構成するアミノ酸のうち一つをアラニンに置換した変異ラリアチンを作成し、その抗ミコバクテリウム活性を評価した。その結果、6か所のアミノ酸残基がラリアチンの生産に重要であり、4か所のアミノ酸残基が抗結核菌活性に重要であることを明らかにした。まず、ラリアチン生産菌Rhodococcus jostii K01-B0171の染色体にコードされているラリアチン生合成遺伝子クラスターlar ABCDEからラリアチン前駆体をコードしているlarAのみを欠失させた。得られたR. jostii K01-B0171ΔlarA株はラリアチンの生産能力を失ったが、larA発現プラスミドで形質転換するとラリアチン生産能力が回復した。この結果から本菌株は予定通りlarAのみが欠損し、翻訳後修飾に関与するlarB~larEは正常に機能していることが確認された。本菌株を宿主として、PCRを用いた変異導入法で作成したさまざまな変異larA発現プラスミドを導入し、ラリアチン変異体を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の基盤となる実験系として変異体を作成する簡便な方法を確立することが最初の課題であり、当初の計画通り、微生物を利用する方法と試験管内酵素反応を利用する方法について検討した。その結果、平成23年度は微生物を利用する方法を確立することに成功した。また、遺伝子の改変はPCRを用いた既存の手法を用いることで、1変異体あたり3日間で作成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
微生物による変異体作成方法を用いて、各種ラリアチン変異体を作成し、生物活性を評価する。生物活性を評価するために、変異ラリアチンを培養液から精製する必要があり、大量培養と精製の過程で予想以上の労力が必要であることが明らかとなった。今後、作成された変異ラリアチンは順次精製し、抗結核活性を評価するが、培養・精製の過程の効率化が次年度解決するべき課題と考えている。また、他の投げ縄化合物のアミノ酸配列を基盤とした各種アミノ酸変異体を簡便に作成する方法を確立する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度支出予定分のうち受託研究(主に機器分析)に関する費用のうち 発注が年度末になった分について、翌年度研究費で精算する予定である。本年度の検討課題であった無細胞系によるラリアチンの合成について検討を行い、系の確立を目指す。
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