研究課題/領域番号 |
23510283
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田代 悦 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (00365446)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | UPR / 小分子化合物 / BiFC / ATF6 / IRE1 |
研究概要 |
我々は,異なる作用点を持つUPR (unfolded protein response) 誘導剤7種による9種のUPR関連遺伝子の計時的発現パターンが異なるという実験結果に基づき,UPR関連遺伝子の発現が小胞体膜上に局在する3つの小胞体ストレス・センサータンパク質 (ATF6, IRE1, PERK) の活性化に起因するため,「UPR誘導剤によりセンサータンパク質の活性化パターンが異なるのでは?」と仮説を立てた.そこで3つのセンサータンパク質の活性化を3色の蛍光タンパク質 (venus, cerulean, mCherry) を用いて検出する系をそれぞれ構築し,仮説を検証するのが目的である.本年度は,ATF6とIRE1の活性化評価系の構築を行った.ATF6は活性化するとそのN末端が小胞体から核内に移行するため,ATF6のN末端に黄色蛍光タンパク質venusを連結させたコンストラクトを作成,核内のvenusの輝度を指標に評価する系を構築した.そしてUPR誘導剤DTTにより核内venus輝度が増加した.今後,他のUPR誘導化合物によるATF6の応答を解析する.IRE1の活性化はBiFC法で評価する系の構築を行った.IRE1は二量体化すると活性化するため,IRE1のC末端に青色蛍光タンパク質ceruleanのN末端 (cerN) もしくはC末端 (cerC) を連結させたコンストラクトを作成,IRE1二量体化によるcerNとcerCの再構成(輝度)で評価する.これまで,様々なC末端欠損変異体,IRE1とceruleanを連結させるリンカー,2つのコンストラクトが等量発現するよう2Aペプチドによる連結などを検討し,IRE1のRNaseドメインとKinaseドメインを欠損させた変異体でceruleanの再構成が起きた.今後,この評価系でUPR誘導化合物によるIRE1の応答を解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は3つのセンサータンパク質の活性化を3色の蛍光タンパク質 (venus, cerulean, mCherry) を用いて検出する系をそれぞれ構築することであった.本年度は3つのセンサータンパク質のうち,2つのセンサータンパク質についてvenusとceruleanを用いて検出する系を構築できた.しかしPERKの活性化検出系の構築は遅れているため,「やや遅れている」と判断した.ただし,PERKはIRE1と同じく二量体化することで活性化するため,IRE1の活性化検出系の構築で得たノウハウが生かされると考えられる.したがって,この遅れは直ぐに挽回できると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
3つのセンサータンパク質のうち,PERKの活性化検出系の構築をおこなう.PERKもIRE1と同じく二量体化することで活性化するため,BiFC法により検出する系の構築を行う.また,すでに構築済みのATF6とIRE1活性化検出については,それぞれのコンストラクトを安定的に発現するHeLa細胞を作成し,でき次第,様々なUPR誘導剤による活性化について測定する.PERKの活性化評価法も構築でき次第,細胞を作成し,様々なUPR誘導剤による活性化について測定する.そして本研究の仮説「UPR誘導剤によりセンサータンパク質の活性化パターンが異なるのでは?」を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度計画していた3つのセンサータンパク質可視化のうち,PERKの活性化検出系の構築が出来なかった.それに伴い,本年度に使用する予定だった一部の研究費を次年度に使用する.具体的には,PERKの活性化をBiFC法で検出する系の構築のために,遺伝子組換え実験を行う.そのために,制限酵素,PCR polymeraseやSequencer試薬などを購入する.また,安定発現細胞を作成するためにリポフェクション試薬や血清などを購入する予定である.
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