研究課題
PCA-1は、ヒトの前立腺がんおよび膵臓がんに高発現が見られ、それらがんの増悪因子であることが明らかになっている。また、メチル化DNAのDNA脱メチル化酵素活性を有し、その酵素活性ががんの増悪化に大きな役割を果たしていることも明らかになっている。そこで、前立腺がんおよび膵臓がんに対する新しい分子標的抗がん剤を開発する目的で、PCA-1の脱メチル化活性を阻害する化合物のスクリーニングを行った。すなわち、3-メチルシトシン含有オリゴDNAを基質として含むPCA-1酵素反応溶液に蚕リコンビナントFLAG-PCA-1を添加し脱メチル化酵素反応を行う。反応終了後、酵素反応溶液を用いてreal-time PCRを行い、非メチル化オリゴDNAの希釈系列を用いて作成した検量線から酵素活性阻害率を計算した。このアッセイ系を用いて生薬や海綿を中心とする海洋生物の抽出エキス約500種類をスクリーニングした結果、約30種のエキスに活性を認めた。前年度までに、活性の見られたアスナロ、ゴシュユ、オトギリソウやチョウジといった生薬の抽出エキスから活性物質としてquercetinやisorhamnetinといったフラボノイド類、フラボノイド二量体・putraflavoneやインドール型アルカロイド・evocarpineの単離に成功している。平成25年度は、アルカロイド含有生薬に注目し、活性の見られたコウボクやタケニグサのアルカロイド含有画分について活性本体を明らかにすることとした。活性の見られたエキスは試験の結果を指標に各種クロマトグラフィーにより分画を行ない、最終的にはHPLCを用いて精製することで活性物質としてコウボクよりアポルフィン型アルカロイドを単離同定した。
3: やや遅れている
3-メチルシトシン含有オリゴDNAを基質として、蚕リコンビナントFLAG-PCA-1を酵素として反応を行うアッセイ系を用いて、生薬や海綿を中心とする海洋生物の抽出エキスをスクリーニングし、活性の見られたエキスから活性物質の単離に成功している。今回単離した活性物質については現在構造解析中で、これらの化学構造を明らかにすることが必要であるがまだ構造決定には至っていない。また、これら活性化合物の酵素阻害活性における選択性や各種がん細胞に対する増殖抑制効果の比較なども行う必要がある。
平成25年度にコウボクから単離した活性化合物の化学構造を明らかにするとともに、酵素阻害活性における選択性や各種がん細胞に対する増殖抑制効果の比較を早急に行い化合物の有用性を検討する。また、今回単離したアルカロイドの類縁化合物をエキス中から探索し、化合物の構造活性相関についても検討する。さらに、平成25年度に引き続き、アルカロイド含有生薬の抽出エキスからのPCA-1阻害活性物質の単離を継続し、より高活性の物質を探索する。
平成25年度単離した化合物の構造決定に時間を必要としているため、その後に行う予定だった培養細胞を使った詳細な作用の解析を行うに至っていない。そのため、培養細胞を用いる実験に必要な試薬および器具等が未購入となっており次年度使用額が生じている。また、さらに大量の活性物質を単離する予定で、それに必要な溶媒やクロマト単体、ガラス器具などを購入予定だったが、現在、化合物の大量単離に着手したところで、その部分についての予算執行が平成25年度中に進んでいないため。平成26年度もエキスの分離を行うためにクロマト担体や溶媒を購入する。また、アッセイに用いる細胞の培養のために、培養用の試薬や培地、アッセイに必要な各種プラスチック器具を購入する。また、日本生薬学会第61回年会(福岡)と第73回日本癌学会(横浜)に参加予定である。
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Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 24 ページ: 1071-1074
10.1016/j.bmcl.2014.01.008