研究課題/領域番号 |
23510284
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
青木 俊二 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (60252699)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | PCA-1 / DNA脱メチル化酵素 / 前立腺がん / 分子標的抗がん剤 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
ヒトの前立腺がんおよび膵臓がんに高発現が見られるPCA-1は、それらがんの増悪因子であることが明らかになっている。また、メチル化DNAのDNA脱メチル化酵素活性を有し、その酵素活性ががんの増悪化に大きな役割を果たしていることも明らかになっている。そこで、前立腺がんおよび膵臓がんに対する新しい分子標的抗がん剤を開発する目的で、PCA-1の脱メチル化活性を阻害する化合物のスクリーニングを行った。すなわち、3-メチルシトシン含有オリゴDNAを基質として含むPCA-1酵素反応溶液に蚕リコンビナントFLAG-PCA-1を添加し脱メチル化酵素反応を行う。反応終了後、酵素反応溶液を用いてreal-time PCRを行い、非メチル化オリゴDNAの希釈系列を用いて作成した検量線から酵素活性阻害率を計算した。このアッセイ系を用いて生薬や海綿を中心とする海洋生物の抽出エキス約500種類をスクリーニングした結果、約30種のエキスに活性を認めた。平成25年度までに、活性の見られたアスナロ、ゴシュユ、オトギリソウやチョウジといった生薬の抽出エキスから活性物質としてquercetinやisorhamnetin、putraflavone、evocarpineの単離に成功している。平成26年度は、前年度に引き続きアルカロイド含有生薬に注目し、活性の見られたコウボクやタケニグサのアルカロイド含有画分の活性本体を明らかにすることとした。試験の結果を指標に各種クロマトグラフィーにより分画を行ない、最終的にはHPLCを用いて精製することで、活性物質としてコウボクよりアポルフィン型アルカロイドを単離同定した。しかしながら、本化合物が不安定だったこともあり正確な構造決定には至らず、現状構造解析を継続中である。また、タケニグサからはイソキノリン型と考えられるアルカロイドを単離しており、現在、構造解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
3-メチルシトシン含有オリゴDNAを基質として、蚕リコンビナントFLAG-PCA-1を酵素として反応を行うアッセイ系を用いて、生薬や海綿を中心とする海洋生物の抽出エキスをスクリーニングし、活性の見られたエキスから活性物質の単離に成功している。しかしながら、今回単離した活性物質が不安定だったこともあり、構造解析が難航し、まだ構造決定には至っていない。また、これら活性化合物の酵素阻害活性における選択性や各種がん細胞に対する増殖抑制効果の比較なども行う必要があるが、それに必要な化合物量を確保することにも時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25~26年度にかけてコウボクから単離した活性化合物の化学構造を明らかにするとともに、安定的に化合物を供給できる分離方法と保存方法を確立する。また、タケニグサから単離したイソキノリン型アルカロイドについても同様に化学構造を明らかにするとともに活性検討に必要な化合物量を確保する。得られた化合物を用いて酵素阻害活性における選択性や各種がん細胞に対する増殖抑制効果の比較を早急に行い化合物の有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に生薬コウボクから活性物質を単離したが、その化合物が不安定だったこともあり、構造決定に必要な化合物を再度単離しなくてはならない状況となり、その後行う予定だった培養細胞を使った詳細な作用の解析を行うに至っていないため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、活性物質の必要量の単離と化学構造決定を完了し、さらに培養細胞を用いた活性評価を行うことで研究成果の総括を行うとともに、その成果を学会発表する予定である。未使用額は、その経費に充当することとしたい。
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