研究課題
植物ホルモンであるオーキシンは極性をもって輸送され,胚形成や光・重力屈性などの重要な成長分化を調節する.オーキシンの極性輸送の詳細な分子機構は,依然として不明である.オーキシンの輸送については,環境変化に対応するオーキシン濃度勾配のダイナミックな変化を観察することは極めて重要であり,その解析のために,ケミカルバイオロジーによるアプローチで,オーキシン輸送に関する研究に取り組んだ.すなわち,本年度は,1.細胞のオーキシン輸送のライブイメージング,2.細胞レベルでのオーキシン濃度の人工制御を可能とする新しいケミカルツールの開発を目的として研究を展開した.1.については,蛍光オーキシンアナログを分子設計し,IAAとNAAにリンカーを介して蛍光基を導入した.15種の蛍光オーキシンアナログを合成し,蛍光顕微鏡で蛍光オーキシンアナログの動的な蛍光像を評価・解析した.それらのうちいくつかが,オーキシンの分布を反映すると考えられる蛍光像を与えた.2.については,細胞内オーキシン濃度を,光照射で3次元制御するために,2光子励起が適応可能なケージドオーキシンを分子設計した.そのため,2光子励起が可能なニトロインダリン(MNI)をケージド基としたケージドオーキシン(MNI-IAA)を合成した.このMNI-caged auxinの光分解能の評価も検討した.その結果、光照射によりIAAが遊離することを確認できた。今後は,光解離離反応の詳細を検討し量子効率などを求める。
2: おおむね順調に進展している
1.オーキシン輸送タンパクの分子機構の解明,2.細胞のオーキシン輸送のライブイメージング,3. 細胞レベルでのオーキシン濃度の人工制御を可能とする新しいケミカルツールの開発を達成することを研究課題としている.初年度では,ケミカルツールとなる化合物のリード構造の探索と化学合成に重点を置いて,研究課題を推進した.その結果,1.については,まだ,満足するケミカルツールの分子設計は達成できていないが,2.と3.に関するケミカルツールについては,それぞれ蛍光オーキシンアナログとケージドオーキシンを分子設計でき,それらは,ほぼ満足できる性能を示した.また,蛍光オーキシンアナログについては,2回の学会発表を行うことができ,ほぼ計画通りに研究目的は達成しつつあると言える.
これまで,ほほ計画通りに研究成果は達成されており,今後とも,計画調書に基づいて研究を推進していく予定である.ただし,オーキシン輸送タンパクの分子機構の解明については,より一層の研究推進が必要と思われる.今後,研究成果を発表していくために,論文発表とともに国際学会でも研究成果を発表する.
予定していた消耗品の使用額が3万円程度,平成23年度の当初の計画より少なかった.このため次年度に計画調書の記載の消耗品と合わせて使用する計画である.
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