研究課題
植物ホルモンであるオーキシンは胚形成や光・重力屈性などの植物の重要な分化・成長過程を調節する.そのホルモン活性の調節は,オーキシンの極性輸送による体内分布の制御が大きく関与している。このことからオーキシン極性輸送が調節するオーキシンの分布については,オーキシン濃度勾配の動的変化を解析することが極めて重要であり,本年度はその解析のため,ケミカルバイオロジーによるアプローチで,オーキシン濃度分布に関する研究に着手した.本年度は,細胞のオーキシン分布のライブイメージングを可能とする新しいケミカルツールの開発を目的として研究を展開した.すなわち,蛍光オーキシンアナログを分子設計し,オーキシンであるIAAとNAAにリンカーを介して蛍光基を導入した.50種の蛍光オーキシンアナログを合成し,蛍光顕微鏡で蛍光オーキシンアナログの動的な蛍光像を評価・解析した.また,同時に陰性コントロールとして必須である蛍光安息香酸や蛍光インドールなどの分子も合成した.シロイヌナズナの根や胚軸を,蛍光オーキシンアナログで処理するとそれらのうちいくつかが,オーキシンの分布を反映すると考えられる蛍光像を与えた.また,一方,陰性コントロールの蛍光分子では,有意な蛍光像を示さなかった.今後は,これら蛍光オーキシンアナログの詳細な輸送機構や分布プロファイルを詳細に解析し,オーキシン分布の動的な変化を解析する.
2: おおむね順調に進展している
本年度は、細胞のオーキシン輸送のライブイメージングを目指して、研究を推進してきた。その結果、目標とする機能を発揮する蛍光オーキシンアナログを分子設計し、合成・評価することができ、その構造最適化を行った結果、満足する分子機構を有する蛍光アナログを創出できた。蛍光オーキシン分子に関する研究成果ついては、植物生理学会・国際オーキシン学会などで、招待講演で発表することができ,当該研究分野での国際的に高い評価を受けた。以上のことから、本年度までの研究の進展状況は計画通りであり、順調に進展しており、ほぼ満足な結果であるといえる。
これまで,ほほ計画通りに研究成果は達成されており,今後とも,計画調書に基づいて研究を推進していく予定である.一部、蛍光オーキシンの研究については,期待以上に研究計画が進展した。しかしながら,光反応性プローブを用いたオーキシン輸送タンパクの分子機構の解明については,輸送タンパクの発現系の構築が問題となっており、共同研究などにより、今後より一層の研究推進が必要と思われる.今後,研究成果を発表していくために,学術論文としてまとめて、発表を目指していく。
本年度予定していた消耗品の予算額70万円程度を当初の計画より減額して使用した。これは蛍光オーキシンの研究が期待以上に進展したことから、この減額分を次年度で蛍光オーキシンの解析に必要な顕微鏡の購入を計画しているためである.
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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