研究課題/領域番号 |
23510287
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
近藤 恭光 独立行政法人理化学研究所, 化合物ライブラリー評価研究チーム, 専任研究員 (80333342)
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キーワード | ケミカルアレイ / Shh / SPRイメージング |
研究概要 |
分泌タンパク質であるソニックヘッジホッグ(Shh)は、正常な胚発生に必須なタンパク質であるが、基底細胞腫、骨芽細胞腫、膵臓癌などの癌細胞においてShhシグナル伝達経路の異常な活性化が報告されている。Shhは、45kDaのShhから活性型の20 kDaのN末端断片(ShhN)への自己切断、C末端へのコレステロール修飾、N末端へのパルミテート修飾が起こり、細胞外に分泌される。腫瘍細胞から分泌されたShhNが、腫瘍細胞の周囲に存在する間質細胞のShhシグナル伝達経路を活性化させ腫瘍の成長を誘導するため、Shhシグナル伝達経路は抗がん剤の標的として非常に注目されている。我々は、構造多様性を有している天然物、天然物誘導体を固定化した化合物アレイを用いて、Shhに結合しシグナル伝達経路を阻害する化合物の探索を目的とした。 ShhNタンパク質を用いたケミカルアレイスクリーニングにより、ShhNに結合する化合物の探索を行った。ShhNタンパク質として、Hisタグ融合タンパク質またはタグを持たないタンパク質を用い、それぞれの検出は、抗His抗体または複数の抗ShhN抗体により行い、約3万化合物の中から322種のShhN結合候補化合物を見いだした。これらの中から、2つ以上の抗体で検出された48化合物が再現性も見られていると考え、次にSPRイメージングによりShhNとの相互作用解析を行った。48化合物のスポットをSPRチップに固定化し、マウスShhNタンパク質との直接的な結合を確認した。その結果、7化合物においてShhNとの強い結合が観察された。今後、結合が確認された化合物のShhNに対する阻害効果を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度計画していたShh結合候補化合物のSPRイメージングによる結合活性及び結合特異性の解析を終了し、有望なShh結合化合物を見いだしている。
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今後の研究の推進方策 |
ShhN結合化合物のShhNに対する阻害効果をマウス未分化間葉細胞C3H10T1/2を用いて検証する。マウス未分化間葉細胞C3H10T1/2にShhNを処理すると、骨芽細胞への分化が誘導されることが知られている。骨芽細胞への分化の程度は、マーカータンパク質であるアルカリホスファターゼの活性を測定することで評価できる。絞り込みを行った化合物を用いて、ShhNが誘導するC3H10T1/2細胞の分化を抑制するかどうかを確かめることにより、ShhNに対する阻害効果の検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23, 24年度と当初の計画以上にスクリーニング、SPRイメージングによる化合物の絞り込みが順調に遂行することができ、ShhN結合化合物の絞り込みができた。そのため、平成24年度の研究費の使用を極力抑えることができた。平成25年度ではこれらの化合物の細胞での阻害活性の評価、阻害経路の解析を詳細に行うとともに、それらの構造類縁化合物を購入し、構造活性相関研究も発展的に行うために研究費を使用する。
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