研究課題/領域番号 |
23510289
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
加藤 孝一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 室長 (50382198)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 炭素11 / アミノ酸 / イブプロフェン / 四級アンモニウムフルオリド / PET |
研究概要 |
11C標識アミノ酸はポストFDG-PET候補の代表的な腫瘍PETプローブである。しかし、標識合成が11C-メチオンニンを除いて困難であること、11C-メチオンニンも代謝的な脱11C-メチル化が生じ良好な画像が得られるわけではないことから、腫瘍PETプローブとしての開発が進んでいない。本研究では11C標識アミノイソ酪酸(11C-AIB)の合成研究に取り組み、堅牢で汎用性の高いワンポット合成法の開発に成功した。腫瘍モデルマウスに対する11C-AIBのPETを撮像し、11C-AIBの腫瘍への集積が11C-メチオンニンだけでなく18F-FDGと比べて高くなることを明らかにした。11C-AIBは11C-メチオンニンと異なりアミノ酸代謝を受けないため腫瘍の集積画像が安定しており、臨床研究における利用価値も高いと考えられる。 イブプロフェンは代表的な抗炎症薬で一般的な感冒薬としても広く利用されているが、その詳細な作用機序については明らかにされていない。イブプロフェンとシクロオキシゲナーゼ活性との関連を評価することを目的として、イブプロフェンのそれぞれの光学異性体を11Cで標識合成し、関節炎モデルマウスを用いたPETによりその薬物動態を追跡した。その結果、以外にもシクロオキシゲナーゼ阻害作用を示すS体と示さないR体間で動態に差がなく、いずれの異性体ともに同様に炎症部位に高い集積を示した。これはイブプロフェンが血中アルブミンと強い相互作用していることが原因と考えられ、現在、この強いタンパク結合の性質を利用して、脳血流プローブとしての開発を行っている。 四級アンモニウムフルオリド類を利用した合成研究としては、新たにテトラブチルアンモニウムビフルオリドが温和な塩基として酸性度の非常に高い活性メチレン化合物のメチル化に有効であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
11C-AIBの標識合成および腫瘍モデル動物のPETによる評価を計画し、11C-AIBの標識合成法の開発に成功し論文発表した。また、腫瘍モデル動物PETの研究から、11C-AIBが腫瘍に高集積するPETプローブであることを見出した。11C-イブプロフェンの光学異性体を光学分割により合成し、関節炎モデル動物のならびにPETによる評価から両異性体間で動態にほとんど差がないことを明らかし、論文発表した。新しいフルオリド塩基としてテトラブチルアンモニウムビフルオリドの有用性を明らかにした。以上の通り、当初計画していた研究を順調に達成した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度以降についても当初の計画に従い研究を実施する。11C-AIBが腫瘍モデル動物に高集積するPETプローブであったことから、今後、ヒト研究に向けた評価を行う。また、11C-AIB以外のアミノ酸の腫瘍PET研究についても取り掛かる。11C-イブプロフェンの炎症部位への集積はタンパク結合に強く依存していることから、この動態特性を活かしたプローブとしても開発を行う。テトラブチルアンモニウムビフルオリドのメチル化反応を利用した小分子の標識合成法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
11C-AIB、11C-イブプロフェン等の標識合成に必要となる試薬、ガラス器具、等の購入に研究費を使用する。PET研究に必要な実験動物等に研究費を使用する。また研究成果の報告として学科発表等の旅費および参加費、ならびに論文投稿の英文公正等に研究費を使用する。
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