本研究では平成23年度にテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)を利用したメチル化反応により堅牢で汎用性の高い11C標識アミノイソ酪酸(11C-AIB)のワンポット合成法の開発に成功し、24年度には腫瘍と急性炎症を同時に発症したモデルマウスに対する11C-AIBのPETを撮像し、11C-AIBの腫瘍への集積が腫瘍に選択的に高いことを明らかにしてきた。 25年度では、11C-AIBのPETがX線照射によるガンの治療効果の早期診断に有効であることを動物実験で明らかにし、現在放射線治療での効果診断におけるヒト臨床研究への準備が進んでいる。一方、11C-AIBは血液脳関門(BBB)透過性の機能を非侵襲的に判断するPETプローブとして有望と考えられることから、本年度は11C-AIBのPETによるマイクロバブルの超音波照射によるBBBの一時的な破壊の状態の撮像を試みたところ、処置後の時間経過に伴うBBB開閉を画像化することに成功した。11C-AIBのPETがBBB透過性のイメージングに有効であることを示した結果であり、マーモセットを用いて遺伝子治療とへ応用を試みている。 平成24年度にはTBAFを利用したメチル化反応により新たに11Cアミノレブリン酸誘導体である11C-MALAを標識合成したが、25度では11C-MALAの滞留とガン特異的にアミノレブリン酸からプロトポルフィリンが蓄積することが相関することを見出した。現在、11C-MALA-PETは光線力学療法の効果を予測する有望な検査法であると期待されている。さらに25年度はTBAFを利用したメチル化反応にホーナーエモンズ反応を融合した連続的C-C結合形成をまとめた、本手法はこれまでの11C標識反応と比較すると、容易でありながら様々な標識化学構造を創り出す方法として放射薬剤の研究分野で注目されている。
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