研究課題/領域番号 |
23510291
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
早川 正幸 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30126651)
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研究分担者 |
山村 英樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70516939)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝資源 / アクチノバクテリア / 生態学 / 分類学 / 微生物 |
研究概要 |
アクチノバクテリアは難分解性物質の分解や抗生物質物質生産など様々な有用性が知られている。しかし、自然界における分布密度は低く、生残性も極めて低いため詳細な種多様性は未解明なままである。そこで、本研究では、河川および河口流域環境に着目し、アクチノバクテリアの河川内生態系における種多様性を解明し、遺伝子資源として評価と保全を目的とする。本年度は陰イオン交換樹脂法・選択培地を用いた迅速・高度選択分離法の構築を目的とした。 まず、陰イオン交換樹脂を用いた高度選択分離法としてカラム法およびバッチ法について検討を行った。カラム法はパスツールピペットに脱脂綿、陰イオン交換樹脂を重層させ、そこに土壌懸濁液を通過させ、NaClで乖離させる方法である。また、バッチ法は陰イオン交換樹脂と土壌懸濁液を混合させ、樹脂を自然沈降させた後に上澄み液を除去、次いでNaClによる乖離を行う方法である。この2つの方法を畑土壌を用いて比較した結果、分離された微生物数はバッチ法が多いことが分かった。さらに山梨県内の畑土壌2点を使ってバッチ法による各種微生物(バクテリア、アクチノバクテリア、放線菌)の分離を行った。得られた分離株は16S rDNA配列による種レベルの簡易同定を行ったところ、コントロール(希釈平板法)と比べNaCl乖離バッチ法は約2倍にまでアクチノバクテリアの分離効率を上げることができた。アクチノバクテリアの中でもBrevibacterium frigoritoleransが選択的に分離されることが分かった。この他に、Kocuria属やMicrobacterium属などが分離された。以上の事から、陰イオン交換樹脂を用いたNaCl乖離バッチ法は通常の方法より効率的にアクチノバクテリアを分離できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクチノバクテリアの新規分離法として陰イオン交換樹脂を用いたNaCl乖離バッチ法を考案した。この方法は簡便性が高いため陰イオン交換樹脂の準備さえ整えば比較的多数のサンプル処理を行うことができる。しかしながら、土壌に限定するとこのNaCl乖離バッチ法はアクチノバクテリア以外にもバチルス属細菌が付随的に出現していることから、抗菌剤をさらに追加することでアクチノバクテリアの選択性を向上させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
アクチノバクテリアの選択性を向上させるためにトリメトプリムなどのキノロン系抗生物質の添加を検討する。実際に亜熱帯の河川流域の試料からアクチノバクテリアを分離するため、7月頃に沖縄県西表島にサンプリングを行い、現地でプレーティングまでを行う。その後、大学で培養を継続してアクチノバクテリアの単離を行い、菌株については20%グリセロールに懸濁し、-80度で凍結保存を行う。分離株は16S rRNA遺伝子の増幅とシーケンスを決定し、その中からアクチノバクテリアのみを選択する。属種の同定はEz-Taxonデータベースを用いて属種の同定を行う。新種と推定される菌株については近隣結合法や最尤法などを用いて系統的位置を決定する。また、河川の上流域と下流域で得られた分離株の多様性評価を16S rRNA遺伝子により決定された属種と分離株数から多様度指数を算出し比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
亜熱帯域の河川からサンプルを収集する必要があるため、沖縄県の西表島にてサンプリングを行う。16S rRNA遺伝子の決定にはシーケンサーを用いる必要があるので、そのための試薬等を購入する予定である。
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