昨年度までに沖縄県西表島の河川流域および比較対照として西表島の海岸から分離されたアクチノバクテリアについて耐塩性試験を行った。塩濃度としてNaClを1%ごとに5~13%の間で基礎培地NBRC802培地に添加し、上流、下流、海岸から分離されたアクチノバクテリアを接種し10日間、30℃で培養を行った。その結果、NaCl濃度11~13%で生育が可能な菌株の割合は海洋環境で約30%、下流は約10%、上流は約5%であった。このような耐塩性に違いがでた原因として生息環境が挙げられる。例えば、西表島周辺の海洋環境において塩分濃度は約34.5‰であることが知られており、一般的な河川流域は塩分濃度が低いため、このような浸透圧に対する耐性に違いがでたと思われる。 分類学的な研究として、まず16S rDNA配列の相同性検索と系統解析を行った。昨年度までに分離されたアクチノバクテリアのほとんどがMicrococcineae亜目に属しており、なかでも海岸からDemequina属の新種が多く分離され、Lysinimicrobium属は上流域から多く分離されていた。この他にも、Microbacterium属からも多くの新種推定株が得られたが、上流と下流、海岸において同程度の株数が得られた。また、少数ではあるがMicrococcus属やNesterekonia属、Isoptericola属の新種推定株も得ることができた。また、多様性解析としてシャノン・ウィーバーの多様度指数を用いて上流、下流、海岸から分離されたアクチノバクテリアの多様性を評価したところ、それぞれ1.06、2.59、2.89であった。上流域で多様度指数が低くなったのはMicrobacterium thalassiumが極端に多く分布していることに起因している。 以上のことから、河川流域に分布するアクチノバクテリアにはM. thalassiumが多く存在し、なかでも上流域に多く分布していた。しかしながら、上流にはLysinimicrobium属の新種推定株が多く存在しており、それぞれの流域には特徴的な菌叢が存在していることが示唆された。
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