ため池生態系の保全と復元において,埋土種子からの発芽や周辺地域からの飛来が期待できない在来淡水魚は,移殖放流によって生息地の拡大を図る必要がしばしばある.そこで,岐阜県美濃地方のウシモツゴ,トウカイヨシノボリ,デメモロコをモデルケースとして,近代以前の個体群構造を高精度に復元し,保全のための放流可能範囲を明確にすることを試みた.その結果,濃尾平野周辺の丘陵地のため池や湿地に生息する魚類の個体群は同一水系であっても丘陵地ごとに分化していることが本来の状態であり,ため池生態系の復元における放流可能範囲は極力狭く設定する必要があることが明らかになった.
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