研究課題
最終年度である今年度は、京都市内のうち、チュウゴクオオサンショウウオ及び該種と在来種との交雑個体が高密度に認められる鴨川水系と、前年度に同様の状況が確認された桂川水系の上桂川における現状把握に重点をおいて調査を行った。その結果、市民からの通報によって保護された18個体分と、回収された死体1頭(桂川)を含む合計のべ120個体(孵化幼生33個体を含む)を調査できた。これらのうち1個体のみが再捕獲個体であった。一方、雑種であることが判明したものについて、過年度よりもさらに詳しい解析を行い、雑種の世代数、両親の遺伝型の推定を行うために、今年度は新たに17遺伝子座を開発し、過年度と合わせた計21遺伝子座のうち、特に有効と思われる15遺伝子座を用いて遺伝子鑑定を行なった。その結果、合計119個体のうち、60個体 (50.5%) が純粋な日本産、1個体が中国産 (0.8%)、1個体が中国産または雑種 (0.8%)、57個体が雑種 (47.9%) と判定された。地域ごとに見ると、賀茂川本流(20個体)では、純粋な日本産はなく、純粋な中国産が1個体 (5.0%)、雑種が19個体 (95.0%) であった。高野川水系では、3個体すべて (100%) が雑種であった。桂川水系では96個体のうち、60個体 (62.5%) が日本産、36個体(37.5%)が雑種と判定された。これらの雑種は、小型の個体はもとより、比較的大型の個体でも2代目以降(F2,戻し交雑)と推定されるものが多く、現在では雑種同士の繁殖によって個体群が維持されている可能性が強く示唆された。このように賀茂川本流では日本産純粋種はもはや絶滅した可能性のあること、同時に桂川水系(とくに上桂川)でもその危機が高まっていることが分かった。
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