研究課題/領域番号 |
23510295
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 友教 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (00451948)
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研究分担者 |
東濃 篤徳 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (30470199)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 人獣共通感染症 / ウイルス / 類人猿 / チンパンジー / ボノボ |
研究概要 |
平成23年度は、日本国内の霊長類における糞便からのウイルスの遺伝子解析の確立を行なった。野生霊長類において現地で採取できるサンプルは糞便に限られる。そこで、第一に糞便からのウイルス抗体検査方法の立ち上げを行った。その結果、国内で飼育されているチンパンジーと野生チンパンジーとボノボにおいて、インフルエンザウイルス等の抗体検査が可能となった。この方法により、類人猿において様々な病原体に対する感染歴を調べることが可能になった。次に、マカク類あるいは国内チンパンジーにおける糞便からのウイルスDNA, RNAの抽出方法の確立を行った。その結果、マカク類と国内チンパンジーにおいて、ウイルスRNAとDNAの抽出に成功した。さらに、マカク類におけるRNAウイルスであるサルレトロウイルス4型のRNAとDNAを、糞便から抽出されたサンプルからNested-PCRとRT-PCR法により検出することに成功した。これらの結果より、メタゲノム解析に必要な霊長類における人獣共通感染症を引き起こす病原体のRNA, DNAの抽出/検出方法がほぼ整備されたと推測する。よって、来年度行なう予定であるメタゲノム解析に必要な基礎的基盤は今年度でほぼ遂行されたと考えられる。さらに、野生類人猿(チンパンジー:マハレ、カリンズ、ボッソウ。ボノボ:ワンバ。)の糞便のサンプリングはほぼ順調に行なわれ、それぞれ約100サンプルを収集できた。加えて、チンパンジーにおいては、野生類人猿の各個体の健康モニタリング方法の確立を行なった。その結果、カリンズにおいてインフルエンザ様症状を呈しているチンパンジーグループを観察し、その糞便試料の採取に成功した。来年度はこのサンプルを含めて、本研究の最終目的である類人猿におけるメタゲノム解析を遂行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、主に日本国内の霊長類における糞便からのウイルスの遺伝子解析の確立を行なう予定であった。1,マカク類における糞便からのウイルスDNA, RNAの抽出方法の確立について;マカク類あるいは国内チンパンジーにおける糞便からのウイルスDNA, RNAの抽出方法の検討を行った。その結果、マカク類と国内チンパンジー糞便からウイルスRNAとDNAの抽出に成功した。2, 糞便から抽出されたサンプルからのNested-PCRとRT-PCRによるウイルス検出系の確立について;マカク類における糞便から、RNAウイルスであるサルレトロウイルス4型のRNAとDNAの検出系の確立に成功した。これらの結果より、メタゲノム解析に必要な霊長類における人獣共通感染症を引き起こす病原体のRNA, DNAの抽出/検出方法がほぼ整備されたと推測する。3, 小規模霊長類個体群が生息する調査地(チンパンジー:マハレ、カリンズ、ボッソウ。ボノボ:ワンバ。)にて、各個体の健康モニタリングと定期的な糞便サンプルの収集について;野生類人猿(チンパンジー:マハレ、カリンズ、ボッソウ。ボノボ:ワンバ。)の糞便のサンプリングはほぼ順調に行なわれ、それぞれ約100サンプルを収集できた。加えて、チンパンジーにおいては、野生類人猿の各個体の健康モニタリング方法の確立を行なった。その結果、カリンズにおいてインフルエンザ様症状を呈しているチンパンジーグループを観察し、その糞便試料の採取に成功した。以上の結果より、平成23年度に行なう予定であった研究計画がほぼ遂行できたと考えられる。よって、(2)おおむね順調に進展していると評価した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、国内のマカク類とチンパンジーにおける人獣共通感染症の同定のための基盤整備を行った。そこで、本研究の最大の目的である野生類人猿の保護政策の一歩を遂行するため、今後は以下のような研究推進方策で研究を遂行する予定である。1, 野生チンパンジーとボノボの乾燥糞便におけるウイルス遺伝子の抽出方法の確立。2, 野生チンパンジーとボノボの乾燥糞便から抽出されたサンプルからのNested-PCRとRT-PCRによるウイルス検出系の確立。3, 国内と野生チンパンジーとボノボの乾燥糞便における人獣共通感染症を引き起こす病原体のメタゲノム解析。4, メタゲノム解析で得られた遺伝子情報からのウイルス株の同定。5, 絶滅の危機に瀕している野生類人猿の様々な地域における糞便のサンプリングの継続。6, 類人猿における人獣共通感染症に関わる研究成果の学会での発表。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、設備投資を重点的に行ない、出来る限り節約して研究を遂行した。そこで次年度は、以下のような研究費の使用を予定している。1,メタゲノム解析用Kitや試薬類の購入;100万円。2,技術補佐員の雇用費;50万円。3,病原体遺伝子の保存のための-30℃フリーザー購入費;20万円。4,国内学会の旅費;15万円。5,論文投稿出版費;8万円。
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