研究概要 |
平成23年度は、ウイルス抗体を検出して、どの野生個体にウイルス感染歴があるか明らかにした。さらに、抽出したウイルスRNAとDNAからRT-PCRやPCR法を用いて検出方法を確立した。そこで、平成24年度は、これらのRNAやDNAを用いたメタゲノム解析を利用して、野生類人猿における人獣共通感染症についての科学的知見を収集することを第一の目的に研究を遂行した。その結果、第一に飼育下類人猿における血球から抽出したDNAと血清から抽出したRNAを用いて、次世代シーエンサーを用いたメタゲノム解析より、様々なウイルスを同時に検出する方法をまず確立した。検出できた代表的な配列を上げると、飼育下類人猿において、エプスタインバーウイルス(EBV)、influenza virus resistance 1 interferon-inducible protein p78、human immunodeficiency virus type I enhancer binding protein 3 (HIVEP3)などが検出できた。さらに、我々は野生類人猿の糞便においてこの方法が有効かどうか検証した。野生類人猿の糞便からウイルスDNA, RNAを抽出して、これらのDNA,RNAサンプルを次世代シーケンサーでメタゲノム解析を行った。その結果、野生類人猿においては糞便の質が悪かったためか、どちらのサンプルからも宿主遺伝子配列を除いてウイルスの配列は検出できなかった。よって、この方法は、野生類人猿の糞便からのウイルス検出法としては、さらなる改良が必要であることが推測された。今後は、野生類人猿の糞便からのウイルスDNA, RNAの抽出方法の改良を行うことで、今回条件設定した次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析系が有効に活用できると考えられる。
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