気候温暖化が里山の昆虫類に及ぼす影響を明らかにするために、ギフチョウなどを対象に研究を行った。本種の蛹を標高の異なる地点に置いたところ、初冬の気温が高い場所では羽化率が低かった。飼育実験の結果を加味すると、蛹期における「長い秋」が高い死亡率の要因と考えられた。衰退の顕著な大阪府北部の産地の個体群を調査したところ、卵の孵化率の低下が確認された。また既に本種が消えた産地では林床植生の植物種数が少なく、野生ジカの生息密度が高いことがわかった。これらの成果は、本種の衰退に暖冬の影響と野生ジカによる下層植生の過剰採食が関係し、個体群縮小による近交弱勢が拍車をかけている可能性が示された。
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