研究課題/領域番号 |
23510301
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
亀田 佳代子(小川佳代子) 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (90344340)
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研究分担者 |
前迫 ゆり 大阪産業大学, 人間環境学部, 教授 (90208546)
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キーワード | 環境 / 生態系修復・整備 / 生態学 / 民俗学 / 鳥獣害 / 森林保全 / 伝統的技術 / 野外実験 |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年度に行った資料収集や検討を踏まえ、具体的な調査や実験内容の詳細について検討を行い、糞採取効果実験に着手した。また、本研究によりとりまとめた研究成果をもとに、国際学会やシンポジウムを含む学会発表を行った。 糞採取効果実験については、カワウコロニー内でポット実験を行ったことのある研究者に具体的な実験方法や実験資材について確認する機会を得た。これによって、適切な材料や資材を用いて、より効果的な実験計画を組むことができた。また、施肥実験については、市販の有機肥料ではカワウの糞とは若干異なる窒素、リン、カリウムの成分比となるため、できる限り成分比をカワウの糞に近づけた肥料で実験を行う方策を検討した。その結果、希望に添った肥料の配合を行うことができる業者から協力を得られることとなり、実験用肥料を入手することができた。一方現地調査の結果から、かつて糞をしみ込ませるための砂を採取していた区域が、樹木等の繁茂により養分を含む土に変化している可能性が示唆された。そのため、現地の砂以外に養分を含まない砂を調達する必要が出てきた。現地の砂質と粒サイズを調べ、同等の砂を入手できるかどうかを検討した結果、実験に適した質とサイズの砂を扱う業者を見つけることができた。この他に、実験予定地が国定公園および国の天然記念物に指定されているため、野外実験および砂の採取に関する現状変更許可申請書を、地元自治体を通じて国や県に提出した。 研究成果の発表については、2012年先進陸水海洋学会日本大会にて糞量の定量化に関わる調査結果を含む研究発表を、第28回個体群生態学会大会シンポジウムおよび第60回日本生態学会大会自由集会では、本研究の基礎となる、カワウによる養分供給が森林や樹木に与える影響に関する研究成果をとりまとめ、長期的影響への示唆も含めて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
伝統的な糞採取の効果を検証するための糞採取効果実験については、平成24年度には本格的に開始する予定であったが、準備段階でいくつかの課題が生じ、代替方法の検討に時間を要した。具体的には、研究実績の概要で説明した、施肥実験のための肥料の配合や糞をしみ込ませるための砂の調達などである。またさらに、まとまった数の実験用のマツの苗木を得るのに適した時期が、実験開始予定時期よりも遅かったため、当初予定していた開始時期より大幅にずれ込んだ。一方施肥実験を行う温室については、散水や遮光、換気の設備に調整や修理が必要となり、安定した環境で実験を行える状態になるまでに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、糞採取効果実験に最大限の力を注ぎ、結果を得る予定である。平成24年度に十分な検討と準備を行ったため、それに即して計画的に研究を推進する。また、現地での糞採取効果実験と同時に植生調査を実施し、糞採取とクロマツ植栽の長期的な森林遷移促進効果の検証材料とする。現地での実験と調査を、研究分担者や連携研究者、研究補助員などの協力により実施することで、同時に効率良くデータを得られるよう調査を行う予定である。また、最終年度としてのとりまとめを行うため、平成25年度は研究会やメールによる情報交換や議論をより一層綿密に行い、議論を深めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
糞採取効果実験の本格的実施のため、糞採取のための砂、配合肥料、サンプル採集のためのユニパック、分析試薬等の消耗品費が必要である。また、現地調査や実験のため、調査地への旅費や高速道路使用料が必要である。限られた時間で調査や実験を効率良く行うためには、調査分析補助員の人件費が必要となる。 調査以外には、とりまとめのための研究会を複数回行う必要があり、そのための連携研究者や研究協力者の旅費が必要である。その他費用として、GISソフトのアップデートや保守サービス費用、資料のコピー代、論文別刷代などに予算を使用する予定である。
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