研究課題/領域番号 |
23510304
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
西崎 伸子 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40431647)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 野生動物保護管理 / 狩猟活動 / 獣害 / 持続可能な資源管理 / 合意形成 / 東アフリカ / エチオピア / 南部アフリカ |
研究概要 |
本研究「新しい狩猟活動の生成に関する地域間比較研究」の目的は、各地で消滅しつつある狩猟活動の維持と生成にかかわる人びとに着目しながら、1)「新しい狩猟活動の生成」の実態を詳細に明らかにし、2)地域資源の持続可能な利用について検討したうえで、2)日本とアフリカの事例を比較し、野生動物保護管理における狩猟文化の位置づけを検討することである。里山的自然環境が多い日本とアフリカの事例を相互に関係づけることで、アメリカ型のワイルドライフ・マネージメントとは異なる、「地域に根差した野生動物保全」の可能性を見出すことを目指している。なお、本研究における「新しい狩猟活動」とは、プロフェッショナル・ハンターや農業者による獣害対策目的の狩猟、ローカルな文脈から乖離している狩猟活動をいう。 平成23年度の当初研究計画では、日本各地で集中的なフィールドワークをおこなう予定であった。しかし、予定していた主要なフィールドである福島県内の自治体や東北地方の自然環境が東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故と放射性物質の環境汚染により大きく変容したために、日本でのフィールドワークは、千葉県鴨川市に変更して実施した。 千葉県鴨川市の農村地域では、現在イノシシ被害が拡大しているが、都市からの移住者が狩猟免許を取得してその対応をしている点が非常に特殊であることが明らかとなった。また、アフリカでの調査は次年度に開始する予定であったが、上記の事情により、南部アフリカ諸国のボツワナでの調査を初年度におこなうことにした。ボツワナはその歴史的な背景から、先進的な野生動物保全政策を実施し、富裕層を対象にした観光産業が非常に発展している。一方で、地域の獣害問題は深刻で、野生動物保護政策への住民参加や経済的利益の還元も住民にとって十分とはいえない状況にあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故により、当初予定していた東北地方(とくに福島県内)での調査活動に遅れが生じた。放射性物質の拡散はとりわけ森林・里山環境に多く、野生動植物へのアクセスが困難になっている。急遽、フィールドの変更を検討する必要があったため、当初計画からの変更・遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
東北地方は、伝統的な狩猟活動や狩猟文化が現在もみられること、農業が盛んで、農業者が狩猟免許を新規に取得している状況がみられることから、本論のテーマである「新しい狩猟活動」の実態把握と伝統的な狩猟文化とのかかわりを明らかにするために適切な対象地であると考えていた。しかし、東北の狩猟活動は、震災の影響を受けて激変することが予想されているため、日本における調査は、昨年度から開始した千葉県鴨川市における調査活動を継続実施することを加えた(4月~7月、10月~2月)。また、アフリカでの調査(8月~9月)は予定通り、東アフリカ(エチオピア)で従来から継続的に現地調査をおこなってきた国立公園周辺で狩猟文化の変容と「新しい狩猟活動」の実態調査をおこなう。 また、東北地方については、本研究の一環として震災後の狩猟活動の変化についても調査を始めることとする(6月~7月、9月~2月)。従来の狩猟活動が震災を受けて、どのように変容しているのか、狩猟者の意識調査を中心におこなうことは、今後の東北地方の狩猟活動を展望するために必要不可欠であると思われる。これらの調査結果を分析したうえで、野生動物保護学会あるいは、環境社会学会での研究発表をおこなった上で、論文執筆を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故により、当初予定していた東北地方(とくに福島県内)での調査活動に遅れが生じたため、今年度は、当初の予定通りに研究が進まない状況となり、研究費に残額が生じた。 次年度は、日本およびアフリカでのフィールドワークの旅費および調査分析のための人件費・謝金、物品費(PC・ソフト購入等)また、狩猟活動を支援しているグループとの研究連携のための研究会開催費(その他)などを中心に使用する予定である。
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