研究課題/領域番号 |
23510304
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
西崎 伸子 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40431647)
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キーワード | 狩猟文化 / アフリカ / エチオピア / 野生動物保護区 / 獣害 / 住民参加 / 里山的自然環境 / スポーツハンティング |
研究概要 |
本研究における「新しい狩猟活動」とは、プロフェッショナル・ハンターや農業者による獣害対策目的の狩猟、ローカルな文脈から乖離している狩猟活動をいう。 本研究計画「新しい狩猟活動の生成に関する地域間比較研究」の目的は、各地で消滅しつつある狩猟活動の維持と生成にかかわる人びとに着目しながら、1)「新しい狩猟活動の生成」の実態を詳細に明らかにし、2)地域資源の持続可能な利用について検討したうえで、2)日本とアフリカの事例を比較し、野生動物保護管理における狩猟文化の位置づけを検討することである。里山的自然環境が多い日本とアフリカの事例を相互に関係づけることで、アメリカ型のワイルドライフ・マネージメントとは異なる、「地域に根差した野生動物保全」の可能性を見出すことを目指している。 平成24年度は、アフリカ(エチオピア)および日本(福島県および周辺地域)で調査をおこなった。エチオピアのマゴ国立公園と周辺地域を含めて明らかになったことは以下の3点である。1)狩猟をめぐる規制を国家が強めていることに変化はなかったが、周辺地域で、さとうきびプランテーションの開発が地域住民の意向を無視した形で進められていることから、国家による地域社会の管理がより強固になっていること、2)「観光」による地域社会への影響が以前より大きくなっており、生態系の保全と観光開発の間にジレンマが出ていること、3)アフリカゾウによる獣害が増加していることである。また、日本での調査は、東北地方が原子力災害の影響によって、狩猟のあり方が大きく変化していることを、狩猟者への聞き取り調査から明らかにしている。 狩猟文化のあり方は、地域社会の政治、経済のあり方と密接に関係している。地域社会の変化と狩猟に関連する事柄の関係を丁寧に見ていくことによって、「新しい狩猟活動」が生成する条件が明らかになると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、国内の新規狩猟免許取得者に関するアンケート調査を初期に実施する予定をしていたが、アンケートの質問項目の策定に時間がかかっており、実施ができていない。しかし、アフリカでの調査を1年前倒しでおこなっていることから、「おおむね順調に進捗している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の国内調査は、1)新規狩猟免許取得者に関するアンケート調査および、2)獣害に従事する農家の意識を狩猟の担い手の形態、動機、活動実態、組織の場合はリーダーシップ、メンバー間の合意形成や、狩猟に関する交渉場面の参与観察および、野生動物との精神的かかわりに関する情報収集を中心におこなう。 海外での調査はエチオピアのマゴ国立公園およびセンケレ自然保護区中心に、狩猟と開発の関係について、より詳細な調査を実施する。また、研究成果の報告は、6月4日~8日にアメリカで開催されるInternational Symposium on Society and Resource Managementでおこなう他、野生動物と社会学会の秋期大会で報告する予定である。国際学会の開催地はアメリカの国立公園の中であることから、現在の国立公園管理や野生動物保護の現状および研究動向をとりわけHD(ヒューマン・ディメンション)に着目して調査することも同時におこないたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内調査、新規狩猟免許取得者に関するアンケート調査を実施するために、印刷費、封筒代、郵送費、データを入力するための謝金および、現地調査および学会発表のための国内旅費が必要になる。 また、海外(アフリカ;エチオピアとケニアを予定)での現地調査のための旅費、謝金、レンタカー代、および、国際学会での報告および現地調査のための旅費およびレンタカー代が必要になる。
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