ミャンマーにおいて上座仏教は政権の正統性原理でもあり、国民意識の核でもある。1991年年宗教省の下に仏教発展普及局を設置し、サンガ組織も国家仏教学大学の学僧を辺境地へ派遣する制度を作り、国家的に布教事業が推進された。こうした仏教布教の調査を通じて、辺境地域での仏教布教が地域によってきわめて多様に展開していることを明らかにした。全国規模で最も成功した活動は僧院附属学校(バカチャウン)であるが、この活動は必ずしも改宗を目的とせず福祉的役割を持つ。これらの活動を通じて、僧侶や在家信者が異なる宗教の人々と出会い、自らの宗教概念、実践を再帰的にとらえなおすプロセスを経る点にも特徴がある。
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