研究課題/領域番号 |
23510308
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
洪 郁如 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (00350281)
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キーワード | 台湾 / オーラル・ヒストリー / データベース / 学歴 / 家族戦略 / 日本教育 |
研究概要 |
1.具体的内容 本研究は、戦後台湾の脱植民地化過程における社会変化への対応について、文化資本をめぐる「家族戦略」の観点から考察を加えるものである。戦前における日本教育の学歴保有者、および非保有者の家庭に対する聞き取りをそれぞれ実施する。そこでは世代間の教育、学歴、職業、婚姻関係の選択における特徴とその変化に着目する。平成23年度の予備調査、文献整理などの基礎作業に基づき、平成24年度では、第一に、台湾現地における聞き取り調査の本格的実施と、第二に、データベース化作業の継続を行った。これらを二本の柱として、平成24年度の作業はほぼ計画通りに遂行された。 第一の家族単位の聞き取り調査の本格的実施について、平成24年度は、4月、7月、10月、12月の4回にわたり計14組の現地調査を行った。第二のデータベース化作業の継続について、(1)聞き取りの結果は、個人別に音声資料としての保存を行い、(2)テープ起こしを経たうえで電子データ化がほぼ完成した。さらに、(3)家族関係を示す家系図のデータベース化を行い、(4)家族史関連写真を収集し、(5)回想録・家族史を含む文献資料の継続収集についての作業も一段落した。 2.意義と重要性 日本教育歴保有・非保有の台湾人家庭のデータ蓄積に関して、平成24年度の実績は大きな意義と重要性を持っている。第一に、日本教育歴の保有・非保有の台湾人家庭を横断する形の聞き取り調査データを発掘し、相当な数まで蓄積できたことは、本研究による初めての成果といえる。第二に、本調査が蓄積したデータは、家族内複数のインフォーマントの語りによるライフ・ヒストリーを主とするため、関連研究の深化に重要な貢献をもたらすであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、第一の台湾現地における聞き取り調査の本格的実施と、第二のデータベース化作業についてはおおむね計画通りに進展している。 第一に、聞き取り調査については、インフォーマントの積極的な協力を得て、予想以上の成果を上げた。平成24年度は、4月の第一回目([1]台中県沙鹿LK、[2]彰化県渓湖YTY、CQY、[3]彰化県渓湖CYH、[4]彰化県永靖WRQ、[5]彰化県永靖WRK、 [6]彰化県芳苑HX、[7]台中市HK)、7月の第二回目([8]台北市ZJM、長女HSF、[9]彰化県YJK、[10]彰化県XSJ、[11]員林鎮HQM)、10月の第三回目([12]台南市HLJ、[13]台南県後壁ZLF)、12月の第四回目([14]嘉義市WQS、LMZ)、計4回14組の現地調査を行った。5時間以上にわたってライフ・ヒストリーを詳細に語ってくれたインフォーマントが多かった。夫婦、親子が相互の記憶をたどり補い合いながら、家族の歴史を再現してくれたケースも複数あった。 第二に、データベース化について、(1)関連出版物と文献資料の収集、および初歩的なデータ入力が完了した。(2)聞き取り調査の音声デジタル化が完了したが、インフォーマント14組の録音量が膨大だったため、テープ起こしの作業と和訳の進行度は全体の8割程度であった。残りの2割は平成25年度の実施計画に組み入れることにした。(3)写真などの影像資料や家系図のデータベース化は完了した。 平成24年度に調査・研究は以上のように順調に進行した。これらの成果は平成25年度の計画遂行にとり重要な土台となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究の推進方策は、第一には聞き取りの補充調査、第二には理論構築、第三には学術界、教育および社会への還元である。 1.聞き取り調査の不足点について、二件の補充調査を実施する。第一件目は、平成24年度に聞き取りを行った[7]台中市のHKであり、当時は退院直後で短時間のインタビューしかできなかったため、平成25年度に再度調査を実施する予定である。第二件目は、戦後について同一家庭内の留学組と非留学組を比較するため、平成24年度、調査に協力してくれた[12]台南市HLJの兄、HLC氏を対象に聞き取り調査を行う予定である。 2.分析と比較による理論構築。平成24年度までのデータベースに基づき、戦後の脱植民地化過程における社会変化への対応について、理論化の作業を行う。 3.考察結果をまとめた論考を、国内外の学会・研究会での発表を経た上で執筆する。学会誌、学術誌などへの寄稿、また書籍の形での刊行、講演などの社会活動を通じた研究成果の社会的還元も行っていく予定である。学会報告について平成25年度の予定は以下の通りである。(1)7月29日、学習院国際交流基金「日本の植民地支配と和解」ワークショップにて論文報告、(2)10月11-12日、台湾清華大学、国際シンポジウム「性別正義:探索家庭、校園與職場的重構機制」にて講演する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費支出残額に989円の端数が生じたが、平成25年度の予算と合わせて執行する予定である。 1.調査旅費(約29万円):平成25年度には二回の台湾追加調査(平成25年8月、11月)を実施する予定である。インフォーマントの日程に合わせながら、北部(台北)、中部(台中)、南部(台南)間を鉄道で移動して聞き取りを行う。 2.物品費(約10万円):データベース構築に必要なソフトウェア、文具、追加調査用のデジタルカメラを購入する。 3.謝金(約24万円):データベースの構築作業については、資料整理、テープ起こし、和訳、入力の研究事務補助員3-5名を雇用する予定である。 4.その他(約7万円):打ち合わせ会議、台湾現地インフォーマントとの通信費、複写費も必要である。
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