研究課題/領域番号 |
23510310
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 裕之 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (90511220)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ラオス / 農林政策 / 土地政策 / 資源管理 |
研究概要 |
本研究は、1975年以降に国家統合を進めながらASEAN地域統合に向けて地方分権化を行っているラオスでの土地・森林政策の変化と実施過程を考察し、中央政府、地方行政、地域住民の間の相互関係を明らかにすることを目的とする。 平成23年度は、次の2つの研究課題を行った。 第1に、ラオスの農林政策史に関する基礎調査を行った。ラオスの農林政策の変化が社会と環境に与えた影響を考察するために、8月にヴィエンチャンで、かつての政府関係者、ラオスで長期に活動を行った日本人、西欧人に対するインタビュー調査を実施した。その結果、1960年代の内戦期にアメリカが行った地域住民の強制疎開がヴィエンチャンの社会と環境に変化をもたらしたこと、1970年代後半から1980年代半ばまで行われた農業の集団化が成果をもたらさなかった一方で、軍・農林省の公社による森林管理は、市場経済化が進んだ1990年代になっても森林開発に影響を与えたことなどが明らかになった。この調査結果は、河野泰之・横山智・瀬戸裕之・田中耕司『現代ラオスの社会・環境の変化と持続性-2011年8月のインタビュー記録-』(Kyoto Working Papers on Area Studies No.122, November 2011)に公表した。 第2に、ラオス北部で中国企業のゴム植林と結合した村の再編に関する研究を行った。ラオスの地域統合への参加過程での資源管理をめぐる政府、外国企業、地域住民の関係について明らかにするために、中国企業によるラオスへのゴム投資を中心に調査を行った。その結果、ポンサーリー県では地方行政機関が中国企業のゴム植林と結合して高地民を低地に移住させており、ラオス地方行政機関と中国企業の間で相互依存的な関係が形成されていることが明らかになった。この調査結果は、平成24年4月に東南アジア学会関西例会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラオスの地域統合への参入過程における資源管理をめぐる政府、外国企業、地域住民の関係調査において、具体的な事例の選定、それに適した分析枠組みの形成に時間がかかった。そのため、平成23年度においては、限定的な範囲でしか調査を行うことができなかった。しかし、この問題については平成23年度中に解決されており、今後の調査・分析の枠組みも明確に絞れてきているため、平成24年度はより効率的に現地調査を行うことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究については、次のように推進する。 第1に、ラオスの社会・環境の変化と継続性に関する調査研究を継続する。前年度の調査で明らかになった知見に基づいて、(1)1960年代の戦争疎開が環境に与えた変化について、シエンクアーン県、ヴィエンチャン県、ホアパン県で調査を行う。(2)1970年代に設立された森林管理公社の活動と変容に関する調査をカムムアン県、チャンパーサック県で行う。これらの調査は、共同研究の形式で実施する。 第2に、中国企業のゴム植林と結合した村の再編に関する調査研究を行う。昨年度にポンサーリー県で行った調査事例で得られた知見について、比較分析するために、近隣の県(ルアンナムター県、ボーケーオ県、ウドムサイ県)において、ラオス政府、中国企業、地域住民の関係に関する調査を行う。 第3に、シンガポールにおける研究成果報告を行う。シンガポール国立大学において研究成果を報告し、シンガポール東南アジア研究所において研究者との交流と資料室での資料収集を行う。 以上の研究活動によって、ラオスの農林政策の変化がラオスの地域社会、環境に与えた影響について考察し、地域統合の中での資源管理をめぐる政府、外国企業、地域住民の関係について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の推進方策に従い、ラオスでの現地調査、シンガポールでの研究政策報告を行う。そのために、次年度の研究費は、次の用途に使用する予定である。 物品費については、ラオス、シンガポールにおいて、ラオスの歴史、農林政策、資源管理に関する書籍、資料等を購入するために支出する予定である。 旅費については、ラオスでの2回の調査費用とシンガポールでの研究報告のための費用を支出する。ラオスでの1回目の調査は、ラオスの環境・社会の変化と継続性に関してラオス中部、南部で実施する。2回目は、ラオス北部での中国企業のゴム植林と結合した村の再編に関する現地調査を行う。そのために、ラオスへの渡航費とラオス国内移動費を支出する。また、シンガポールでの研究報告・資料収集のために、シンガポールへの渡航費と宿泊費を支出する。 人件費・謝金については、ラオスでの現地調査の協力者に対する謝金を支出する。 その他、ラオス国内での移動のためのレンタカー代等について支出する予定である。
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