研究課題/領域番号 |
23510310
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
瀬戸 裕之 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 講師 (90511220)
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キーワード | ラオス / 農林政策 / 土地政策 / 資源管理 / 中央地方関係 |
研究概要 |
本研究は,1975年以降に国家統合を進めながらASEAN地域統合に向けて地方分権化を行っているラオスでの土地・森林政策の変化と実施過程について考察し,中央政府,地方行政,地域住民の間の相互関係を明らかにすることを目的とする。 平成25年度は,次の研究課題を行った。 第1に,昨年度に引き続き,ラオスの社会と環境の変化について,11月にホアパン県で現地調査を行った。特に,1960年代以降のラオス内戦期における山地部住民の移住とその後の生業変化について,戦争移住者がかつて居住していた村の状況を追加調査した。調査の結果,戦争移住を行った住民と移住を行わなかった(元の村に帰還した)住民との間で1990年代に交流が再開されるものの,双方の住民の財産の所有状況に変化が生じていたため,かつての村の状況には回復できなかったことが明らかになった。 第2に,ラオス北部で中国企業のゴム植林と結合した村の再編に関する研究について,昨年度までに収集した資料をまとめて英語論文を執筆し,京都大学東南アジア研究所が発行する『Southeast Asian Studies』に投稿した。現在,東南アジア研究所で論文審査が行われている。 第3に,1975年以降のラオスの中央地方関係について,開発と治安の2つの軸の間での政策変化である,という視点から整理し,「フロンティア国家における開発と治安のバランス-ラオス・ヴィエンチャン県にみる中央集権化と地方分権化-」というテーマで東南アジア学会第89回研究大会(鹿児島)において報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年8月16日に名古屋大学大学院法学研究科に転勤し,新たにラオスで教育・研究拠点を設立する業務が生じたため,当初に予定していた回数の現地調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究については,次のように推進する。 第1に,ラオス内戦期の戦争移住と住民の生業・環境への影響に関する調査を引き続き実施する。特に,シエンクアーン県,ボーリーカムサイ県など,戦争による被害が大きかった地域で,各村の状況を比較することによって,戦争移住と住民の生業変化の全体像を把握する。調査では,住民の生業変化,生活再建の要因に重点を置いて考察することによって,地域の生業・環境の変化だけでなく,村の住民の耐久能力(レジリエンス)についても明らかにする。 第2に,現在,ラオスの政府と党によって推進されている新たな地方分権化政策の動向と地方での資源管理に与える影響について調査を実施し,政策の方向性と政策実施の要因について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年8月16日に,名古屋大学大学院法学研究科に転勤し,ラオスで新たに研究・教育拠点を設立する業務が発生したために,従来,計画していた,ヴィエンチャン県,シエンクアーン県,ボーリーカムサイ県での戦争移住に関する調査,並びにラオス北部における中国企業,地方行政機関,現地住民との関係に関する追加調査を実施することができなかった。従って,これらの調査については,平成26年度に引き続き実施する予定である。 平成25年度には,現在,政府・党によって進められている地方分権化政策について十分に考察を行うことができなかった。従って,政策変化を把握するために,平成26年度にさらに調査を行う必要がある。 平成26年度は,2つの調査・研究活動を実施する。 第1に,戦争移住調査をヴィエンチャン県とシエンクアーン県,ボーリーカムサイ県で実施する。京都大学東南アジア研究所,ラオス国立農林業研究所と協力して現地調査を実施するとともに,調査結果については,ラオスで研究会を開催するほか,日本でも共同研究者と学会報告を行う。第2に,現在,ラオス政府,党によって実施されている地方分権化政策について、その政策形成の背景と実施の影響について調査・分析する。実施においては,ラオス国立大学と共同しながら現地調査とラオス内での研究会を実施する予定である。 科研の研究費は,上記の調査のための調査旅費,研究協力者への謝金,研究会の開催費用のために支出する予定である。
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