研究課題/領域番号 |
23510312
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤川 隆男 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70199305)
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キーワード | オーストラリア史 / 歴史博物館 / 歴史教科書 / ナショナリズム / 歴史戦争 / 国際研究者交流 / オーストラリア / 地方博物館 |
研究概要 |
今年度行う予定であった計画のうち、 (1)南オーストラリアにおける歴史博物館等の調査、とりわけ歴史的鉱山町バラの歴史博物館の調査を行った。(2)キャンベラで歴史のカリキュラム改革に関する関係者のインタビューを実施した。さらに、(3)西オーストラリアで開かれた歴史教育学会に参加し、歴史の教員と接触し、新しい歴史教科書とそれによる教育に関する情報を収集した。続いて、(4)西オーストラリアにおける博物館等の調査を行った。また、(5)ウエブ上のオーストラリア辞典及び年表のソフトウェアを更新した。以上5つの計画は、当初の予定通りに実施した。 このほか、クィーンズランドにおけるイン・デプス・スタディを予定していたが、これに代えて、NSW州のガンダガイの歴史博物館の集中的調査と、ヴィクトリア州や南オーストラリア州などにおける移民やエスニックグループの博物館の調査を行った。さらに、「社会の歴史化」の特徴を、現在のナショナル・アイデンティティやナショナリズムとの連関の構図を提示するという予定に関しては、その媒体を主に都市と地方の博物館に求め、19世紀以来の歴史展望のもとに、これを論文として書き上げ、これを『西洋史学』に投稿した。 こうした予定した活動に加えて、クィーンズランドの博物館の類型的な特徴を示した論文を、「オーストラリアにおける歴史戦争後の歴史博物館」『パブリック・ヒストリー』10号、2013年、pp.15-33として、出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、予定していた研究計画のうち(1)南オーストラリアにおける歴史博物館等の調査。(2)関係者のインタビューを実施した。(3)歴史教育学会への参加。(4)西オーストラリアにおける博物館等の調査。(5)オーストラリア辞典及び年表のソフトウェアを更新を予定通り実施し、残る二つも、NSW州のガンダガイの歴史博物館の集中的調査と、移民やエスニックグループの博物館の調査。都市と地方の博物館の歴史展望を示す論文の執筆を行うことで、代替するに十分な活動を行った。それに加えて、クィーンズランドの博物館の類型的な特徴を示した論文を執筆しており、計画は十分に進んでいると思われる。 また、研究目的から考えても、地域の歴史化に関連して、博物館の類型に関する論文と、19世紀以来の長期的視野に立った博物館の展開を歴史意識との関連で論じた論文を執筆できたことは、大きな前進だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の計画を踏襲して、今年度の計画を進めたいと考えている。具体的には次の計画を実施する。 (1)学会での報告または論文として成果の公表を行う。(2)オーストラリア人研究者を招いたセミナーを実施し、内外の研究者からの批判を受け、研究計画を再点検 する。(3)新しい歴史教科書に関して、オーストラリアにおける確認調査を実施する。(4)新しい歴史教科書の翻訳を進め、それを出版する目処をつける。(5)最終報告書をとりまとめる。 このうち、(4)に関しては、明石書店を通じて、一つの出版元との交渉に入っているが、不確定要素が残る。交渉がうまくいかない場合には、他の出版元との交渉を進めることになっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に多額の剰余が生じたために、平成24年度から一部予算を持ち越しているが、それはセミナー開催の費用と再度の現地調査費用として活用する予定である。 昨年サバティカルにより、長期の現地調査が可能になったために、文献等に支払う費用並びに、文献複写の人件費を低くすることができた。前述の残余額はこれに当たる。今年度、こうした費用を、海外での最終調査の期間の拡大と、オーストラリア人を招いたセミナーの拡大に利用したいと考えている。つまり、平成25年度は、最終報告書の準備や一部の文献の入手費用を除いて、大部分の予算は、オーストラリアにおける現地調査とオーストラリア人を招いたセミナーに支出する予定である。
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