研究概要 |
今年度は、次の5つの課題を達成することを目標とした。(1)学会での報告または論文での成果報告を行う。(2)オーストラリアの研究者を招いたセミナーを実施し、内外の研究者からの批判を受け、研究を検証する。(3)新しい歴史教科書に関して、オーストラリアにおける確認調査を行う。(4)新しい歴史教科書の翻訳を進め、出版の目途をつける。(5)最終報告書を取りまとめる。 以上の計画に関する成果は以下のとおりである。(1)については『西洋史学』で論文「オーストラリアにおける歴史博物館の発達とポストモダニティ」を発表し、歴史意識とナショナリズムの問題を検討した。(2)については、11月10-11日に2013年に、the Second International Seminar on Australia in Osaka, 2013を開催し、新しいナショナリズムが歴史教育や博物館に及ぼす影響が、オーストラリアだけでなくイギリスやカナダなどでも大きくなっていることを確認した。その内容は『パブリック・ヒストリー』で公開した。(3)については、キャンベラやオーストラリア東海岸における調査を同年8月に実施した。(4)については、明石書店を通じて複数の出版社と交渉したが、画像の権利の問題がいまだに解決していない。(5)は作成中である。 (4)が未達の状況が続いたために、その代替として、計画にはなかったオーストラリア東部沿岸の歴史博物館の調査を行った。この調査は、今回の研究を発展させた、4月から始まる新たな研究の基礎の一部をなすものであり、早期に成果を公表する予定である。 全体として、歴史が社会に浸透し、それが歴史戦争や新しいカリキュラムの作成と深く結びついている状況を示し、それが多くの国に共通した、グローバルな状況の一部であることを示すことができたと思われる。
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