本研究は、公共圏や親密圏という近代的な概念が南太平洋の都市においていかなる有様を呈するのかということを解明することを目的としている。南太平洋の都市は、村落と都市の区分を設けるのが難しいところに成立しているゲマインシャフト都市であり、そこでは、社会科学で一般的に想定されている「閉じた村落共同体」と「開かれた公共圏」という二分法では捉えきれない新たな共同体が出現している。それは、互いに異質な者が異質なまま存在することが許されるヘテロトピー状況と、近代的な都市としてのイゾトピー状況が共存する新しい共同体であり、そのことが、従来の公共圏概念などの見直しを迫っている。
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