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2012 年度 実施状況報告書

中国北方少数民族の生活変容の記憶と現在にかんする社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23510317
研究機関島根県立大学

研究代表者

坂部 晶子  島根県立大学, 総合政策学部, 准教授 (60433372)

キーワード国際情報交換 / 社会学 / 中国東北 / エヴェンキ / 少数民族
研究概要

本研究の目的は、中国北方少数民族の生活世界の変容を、彼ら自身の集合的・個人的記憶の語りをとおして再構成し、中国東北社会の歴史を多元的現実として記述し考察することにある。この目的のために今年度行われた調査・研究の概要は以下のとおりである。
第一は、中国のフィールドにおけるネットワーク形成と資料収集である。中国北方少数民族のなかで、とくにオロチョン族、エヴェンキ族、ダウール族などの「小民族」が集住する地域として代表的なのが、内モンゴル自治区ホロンバイル市のハイラル周辺の地域である。本年度は、このホロンバイル市を中心に各少数民族の幹部や若者へのネットワーク形成を重点的に行った。とくに少数民族研究の拠点の一つである呼倫貝爾民族歴史文化研究院院長と研究員を訪問し、現在の研究状況についての情報交換、さらに資料や文献の交換を行った。また、現地を訪問していた中央民族大学の研究者や人類学・言語学の専門家等へのインタビューも行った。
第二に、北方少数民族の一つ、エヴェンキ族はホロンバイル地方の各地に分散して生活しているが、彼らの集団の重要な拠点であるエヴェンキ自治旗(南屯)および根河市のオルグヤ民族郷において、インテンシブなフィールドワークを行った。民族自治旗の政府所在地である南屯において、民族研究会の代表者への聞きとり調査および資料収集、さらに民族芸術の継承・保存に取り組む人々への聞き取り調査を行った。根河市には現在も山林でトナカイ遊牧を行う人々がおり、彼らの山中のテント(猟民点)へ赴き、生活の現況についてのヒヤリングと参与観察を行い、また政府支援による定住村では老人や若者への意識調査を行った。
第三に、戦前期に行われた中国北方諸民族にたいする各種調査研究の資料収集を、日本国内の図書館において実施した。
これらの調査の成果は、下記の研究報告のなかに一部反映されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の進捗状況についておおむね順調に進展していると考える理由は、以下のとおりである。
本研究課題では、研究計画は大きく三つの段階に分かれる。これらはそれぞれ別個に並列的に行うことの可能な作業であり、そのそれぞれについて、調査・研究が比較的順調に進展している。第一段階は、中国北方諸民族にかんする通時的な歴史・民族資料の収集であり、すでにこの二年間で中国東北現地および北京、さらに日本国内での資料収集が進んでいる。第二段階は、民族自治旗における民族イベントについてのフィールド調査であるが、オロチョンについてはすでに調査を完了し、エヴェンキについてもおおむね現状を把握できるだけの現地調査を実行した。第三段階は、それぞれの少数民族の古老を中心としたライフヒストリーの収集であるが、これについても、すでに20~30人のインタビュー・データが収集できている。

今後の研究の推進方策

次年度は本研究課題の最終年度にあたり、これまでの調査・研究において得られたデータを総合的に整理・分析し、さらに不足する部分について集中的にフィールドワークを行うものとする。
今年度現地調査を推進すべき最大の課題は、昨年度に引き続き、民族集住地域の各民族の生活状況の把握と、とりわけ民族内部での生活形態が多様化しているエヴェンキ族について、伝統的な生活様式と意識、現代的な生活変容と人びとの対処のあり方について、参与観察を中心としたフィールドワークを積み重ねることにある。
必要な調査資料やインタビュー・データの多くは、すでにこの二年間で蓄積されつつある。今年度はそれを補う調査を行うとともに、エヴェンキ族の現況を描きとめるための民族イベントの実施状況について、集中的なフィールドワークを行う予定である。また複数の民族が混住している地域において、それぞれの民族の人びとの各民族間の関わりと意識についてもインタビューを行う予定にしている。

次年度の研究費の使用計画

(平成25年度)
(1)平成24年度までの調査成果にもとづき、各フィールドの状況について、テープおこしなどの資料整理、知見の整理分析を行う。(→謝金・物品費・その他)
(2)中国でのフィールド調査をトータルで4~5週間程度実施する。昨年度の現地調査期間においては時期があわず、民族イベントについての直接的なフィールドワークが実施できなかった。そのため、今年度はとくにエヴェンキ族自治旗、さらに根河市オルグヤ民族郷において、集中的な参与観察を実施する予定である。(→旅費・物品費・謝金・その他)
(3)中国でのフィールド調査以外の期間は、昨年に引き続き日本での資料収集、および本年度の中国での聞きとり資料のデータ整理と分析をすすめる。とくに民族イベントにかんするフィールド資料の整理を行い、比較分析を行う。(→旅費・物品費・謝金・その他)

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 中国北方少数民族鄂倫春社会中的殖民地秩序的崩潰与社会秩序的重組2012

    • 著者名/発表者名
      坂部晶子
    • 雑誌名

      『鄂倫春研究』

      巻: 34号 ページ: 29-34

  • [学会発表] 帝国と国家の周縁部から見た北東アジア――大興安嶺山中のオロチョン自治旗を事例として

    • 著者名/発表者名
      坂部晶子
    • 学会等名
      日中韓三カ国学術シンポジウム「ポスト金融危機における北東アジア地域の発展と協力」
    • 発表場所
      中国山東省済南市
  • [図書] 『二〇世紀満洲歴史事典』2012

    • 著者名/発表者名
      貴志俊彦・松重充浩・松村史紀他102名
    • 総ページ数
      840
    • 出版者
      吉川弘文堂

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公開日: 2014-07-24  

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