社会主義国家の特異な民族政策下において、中国の北方少数民族の人びとが経験してきた生活変容のプロセスを明らかにすることによって、生活領域や生活様式の近代化のなかで獲得されてきたもの、喪失しつつあるものについて、彼ら自身の生活世界の視点から示した。とくに近年復興しつつある民族イベントは、当該民族の人びとにとって「創られた伝統」であることは看取されつつも、彼らの一定のアイデンティティの源泉ともなっている。こうした関与のプロセスを、政府の民族政策批判でもなく、単なる一民族の承認運動でもない、当事者自身に生きられた社会史の一端として描きだした。
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