本研究では、現代中国における所有権改革の問題に関して、法制度の改革とその試行によってもたらされる政治社会の変化との関係性に着目し、その基礎的な問題点を整理し、所有権改革の政治社会的な影響を考察した。 とくに、2007年3月16日の物権法制定のプロセスを取り上げ、全人代において論議され、且つ改革派知識人による批判によって巻き起こった論争が社会主義体制の根幹を問うていることを明らかにした。また、物権法の施行によって、都市・農村の基層社会において、私有財産の保護、土地収用に伴う農民への補償が法的に明確化され、その社会矛盾が「法治」によって解決される方向性が出てきたことを明らかにした。
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