研究課題/領域番号 |
23510319
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
下野 寿子 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (40294607)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 福建省 / 台湾工作 / 厦門 / 経済特区 / 対外開放 / 直接投資 / 台商 |
研究概要 |
本研究は、対外開放(経済問題)と台湾問題(政治問題)が交差する福建省に注目し、中央・省・市の各レベルにおいて外国資本導入政策と対台湾工作がどのように関連しながら展開してきたのかを明らかにすることを目的としている。平成23年度の研究遂行状況は以下の通りである。1. 先行研究と関連する文献の議論について整理した。その内容は、中国の中央・地方関係に関する理論的考察、福建省や厦門経済特区に関する議論、中国共産党政権の台湾政策に関する議論である。また、本研究とは関心の所在もアプローチも異なるが、関連性のある最新の研究動向として、平成23年に福田円氏が発表した、1950年代の福建省と台湾工作に関する研究についても検討した。2. 文献調査については、アジア経済研究所や香港中文大学中国研究服務センターの資料を活用した。福建省や大陸全体への台湾資本の導入は実態把握が難しいが、台湾側の統計を用いて大陸側統計の不備を補い、年ベースの概況を作成することができた。3. 研究成果については3回報告し、先行研究の整理・本研究の仮説・研究手法・現地調査の実施方法などについて、歴史・政治・経済・国際関係の各分野の研究者と意見交換を行った。南島史学会では1970年代末から1980年代前半における福建省の対台湾工作の転換点について地方指導者の言動を中心に報告した。APISA5では1980年代~1990年にかけての福建省の対外開放の中で、台湾がどのような存在感を持っていたのかについて発表した。東アジア地域研究会では、台湾工作について中央・地方の各レベルでどのような政策が採られたのかについて議論した。4. 三通の意義と実態を確認するため、金門島を含む台湾・福建省の直行便ルート(船舶および航空)を踏査した。あわせて大陸で経済活動を行っている台湾企業を視察し、中台経済関係の実情について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の整理、中央・地方関係に関する文献の検証、中台双方が発表した統計資料の整理、改革開放期の台湾工作に関する文献の一部入手、国内外での資料収集、研究会・学会・国際シンポジウムでの今年度の成果を報告し意見交換したことなど、概ね順調に予定していた研究目標を達成した。また、日中友好経済懇話会主催の三通(中台間の直接の通航・通郵・通商)視察に同行し、三通の実態と中台経済交流の観察、福建省沿岸部の交通機関整備状況を確認して、研究上、大きな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
福建省(福州市)と厦門市での聞き取り調査・地方新聞の精査・地方政府が発行した外資導入と台湾に関するパンフレットなどの閲覧・中国人研究者との意見交換に重点を置く。また、地方レベルの台湾工作における軍事的側面と経済的側面との関係性について検討する。研究成果の報告とフィードバックについても学会・研究会やHPを活用して行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は現地調査のため、福建省を複数回訪問する予定であり、その諸経費が30万円余りに達する見込みである。また、中国大陸・台湾・香港で出版された書籍・統計資料の購入ならびに非公開文献の閲覧複写に30万円、研究成果の報告のためにかかる諸経費(旅費を含む)に10万円を見込んでいる。最終年度には、中央政府と地方政府との台湾工作の変遷の照合を行う予定であるが、その検証のための現地調査に30万円余りの経費、文献購入と資料収集閲覧に30万円弱の経費、研究成果の報告に10万円程度の諸経費を見込んでいる。
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