研究課題/領域番号 |
23510322
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
増井 志津代 上智大学, 文学部, 教授 (80181642)
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / アメリカ / ピューリタン / ニューイングランド / 奴隷貿易 / 環大西洋 / カルヴァン主義 |
研究概要 |
2012年8月から9月にかけて米国マサチューセッツ州ハーヴァード大学図書館を中心としたリサーチ、オランダ三都市での調査旅行を行った。ハーヴァードではマサチューセッツ湾植民地と奴隷貿易に関する史料を調査し論文をまとめた。また、2013年度に本科研で招聘を予定しているDavid D. Hall教授と来日についての打合せをした他、David Armitage, Joyce Chaplin教授とも研究についての意見交換を行った。さらに、ボストン大学アメリカ研究科所属研究者(Anita Patterson教授他)と今後の研究協力関係について相談した。加えて、奴隷制研究を社会学的視点から研究しているOrlando Pattersonハーヴァード大学教授とも意見交換を行った。内数名の研究者が来日に同意してくれたので、今後の研究関係をさらに推進したい。オランダではアムステルダム、ハーグ、ライデンを訪問し、カルヴァン派ディアスポラの史跡をたどることができた。ライデンではピルグリムズに関する史跡を訪ねて調査をおこなった。現地に赴くことで、カルヴァン主義と寛容の問題、環大西洋奴隷貿易と宗教のテーマについてさらに細かい情報や資料を得ることができた。また、アムステルダム大学アメリカ研究科George Blaustein助教授、ライデン大学ハーグ校Ann Marie Wilson助教授等若手アメリカ研究者と交流し、様々な情報を得ることができた。 今年度は『環大西洋奴隷貿易』に関する翻訳書を出版したが、この関連で、特に奴隷貿易とピューリタン植民地に関する調査を行った。マサチューセッツ商人に関してはいくつかの研究書がすでにあるものの、奴隷貿易に着目した研究はあまりない。そこで、今年度は奴隷貿易とピューリタン倫理についての考察が中心研究課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)カルヴァン主義ディアスポラとニューイングランド・ピューリタニズムとの関係を、16世紀宗教改革以降の印刷文化や人的交流ネットワークを軸に探る。(2)18世紀第一次大覚醒までに北アメリカ植民地において大きな影響を持つに至ったカルヴァン主義諸派の共同体の展開を探る。以上、二点を目的とした本研究の二年目では人的ネットワークと物資の交流に着目した。そのため、英国ピューリタンの多くが移住したオランダの現地調査に赴いた。カルヴァン主義の現れ方は地域によって異なるが、オランダの寛容政策もまたカルヴァン主義との関係でも考察できる。ライデンではピルグリムズの足跡を訪ねた。オランダの交易品には黒人奴隷が利益を上げる商品として含まれたわけだが、奴隷の交易は17世紀ピューリタン・ニューイングランドでも実践されたので、これに関する史料をハーヴァード大学の図書館等で調べた。これについては、成果の一部を平成25年度内に学会で報告する。この点をさらに追求するには西インド諸島におけるカルヴァン派のディアスポラも研究射程に入れる必要がある。 海外調査滞在中、今年度は多くの研究者との交流を持ち、来日に関する打合せをすることができた。H25年は、David D. Hall教授を招聘するので、その打合せも行った。研究者交流とともに、学生や一般に向けての講演を企画することで同意した。 調査は順調に進んでいるが、論文執筆の進捗状況は遅い。今後は、執筆により多くの時間を割きたい。そのような中、奴隷貿易に関する研究書の翻訳出版をして、カルヴァン派だけではなくヨーロッパ諸国全般の南北アメリカ大陸および西インド諸島への移動に関する大きな流れをかなり把握することができたのは収穫であった。 以上、研究はおおむね順調に進んでいるので、今後は調査と共にこれまでの成果をまとめる努力をしたい。
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今後の研究の推進方策 |
2年間調査地を回ったが、最終年度もさらに海外調査にでかけたい。それとともに資料をまとめて、研究最終報告に向けた論文執筆を本格的に行いたい。他の研究者による関連研究書や論文の書評・論評を依頼されているので、学会報告とともに、書評論文執筆を今年度中に行う予定である。 6月、日本ピューリタニズム学会で奴隷制度とピューリタン倫理についての中間的な研究報告を行い、専門研究者と意見交換を行いたい。8月~9月、渡米し、ハーヴァードでの調査を継続すると共に、David D. Hall教授と11月の来日についての打合せを行う。滞米中、来日の可能性のあるその他の研究者との交流や情報交換も行いたい。可能であれば、夏休み中、ヨーロッパでの調査も継続する。西インド諸島における現地調査を希望するものの、研究年度中の訪問は困難と思われる。今回は、英米、ヨーロッパにおける資料調査でこれを補いたい。 11月のDavid D. Hall教授来日時には、専門研究者との研究交流と共に、学部、大学院生、一般に向けた講演を初期アメリカ学会、上智大学アメリカ・カナダ研究所、ICUを中心に開催する。その成果は、またアメリカ・カナダ研究所のジャーナル等で発表する予定である。また今年度は、10月に市民講座で一般向け講演を行うので、その折にこれまでに得られた成果披露を広く行いたい。 今回の研究は北米東海岸のピューリタン植民地を中心としているが、ほぼ同時代のスペイン、ポルトガル領カトリック植民地との対比も今後の課題として残る。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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