研究課題/領域番号 |
23510323
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
川島 緑 上智大学, 外国語学部, 教授 (50264700)
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キーワード | フィリピン / イスラーム / ウラマー / 思想 / ネットワーク / 写本 / 東南アジア / ミンダナオ |
研究概要 |
8月6日、フィリピン、マニラ市にて国立フィリピン歴史研究所主催国際シンポジウム「マフール以降のフィリピン・ムスリム歴史叙述」に招待講演者として出席し、本研究の成果の一部を発表した。これに合わせて8月4-8日、ミンダナオ国立大学の若手講師Adam Acmad氏、Tirmizy Abdullah氏をマニラ市に招聘し、フィリピン国立公文書館でのミンダナオ、スールーの現地語資料調査、国際シンポジウム参加、研究打ち合わせを共同で行った。 9月6-18日、インドネシアのイスラーム写本研究者Ervan Nurtawab氏をフィリピン、マラウィ市に招聘し、アッサディーク図書館、およびタラカ町のイスラーム学者所蔵のイスラーム写本、刊本の調査と写真撮影を行った。9月14日には、ミンダナオ国立大学歴史学部、およびアメリカン・コーナーとの共催により、同学教員、学生約30名を対象として、「ミンダナオ写本に関するセミナー・ワークショップ」を開催し、研究成果の現地への還元と、若手研究者の養成を行った。 3月16―23日、マニラ首都圏、およびコタバト市のイスラーム書店、ナフダ中央学院、ノートルダム大学等を訪問し、現地で刊行されたたタガログ語、マギンダナオ語、アラビア語等のイスラーム出版物を収集した。 さらに、研究成果の一部を第4回NIHUイスラーム地域研究国際会議(ラホール市、11月2日)、Nutawab氏が教鞭をとるインドネシア国立イスラーム大学ジュライ・シウォ・メトロ校主催国際セミナー(ランプン州、3月13日)で報告した。 また、アッサディーク図書館所蔵ムハンマド・サイド・コレクションの英文解題付カタログの執筆、編集作業はほぼ終了し、画像編集と共同執筆者による最終確認を残すだけとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コタバト市でのマギンダナオ語イスラーム書を収集を含め、資料調査・収集・デジタル化作業は順調に進んでいる。ただし、マレーシア、サバ州タンパソク周辺での調査は、現地の治安情勢に不安があるため、実施を見合わせた。サンボアンガ州での資料収集も治安に注意が必要なため、現地の研究者と連絡を取りつつ情報収集し、次年度の実施に向けて準備を進めている。 海外研究協力者との連携、学術交流は順調に進展しており、特に海外研究協力者が中心になって、それぞれの所属大学でワークショップとセミナーを開催し、インドネシアやフィリピンの研究者や学生に対して研究成果を示し、この分野に対する研究関心を高めるとともに、フィードバックを得ることができた。 調査・デジタル化を終えたイスラーム写本コレクションの解題付カタログの編集作業は、当初の予想よりも多くの労力が必要であったため、刊行がやや遅れているが、編集作業は着実に進捗している。ムハンマド・サイド・コレクション・カタログはすでに草稿が完成し、執筆者の間で最終確認中である。従って、総合的に判断すると、当初の研究目的をほぼ予定どおりに達成することができたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の本年度は、サンボアンガ州での資料収集、及び、これまでに収集したラナオ地方、コタバト州のイスラーム文書の解題付カタログの編集、刊行を行うとともに、収集した資料を分析し、論文執筆を行う。さらに、現地への成果還元と現地研究者との研究連携の強化を目的として、本研究の成果に基づくワークショップをフィリピンにおいて開催する。 9月に海外研究協力者とともにサンボアンガ州、南ラナオ州に出張し、資料収集を行う。3月にマニラとマラウィ市に出張し、ワークショップを開催して本研究の成果を発表する。カタログ2点と論文2点を年度内に刊行し、もう1点のカタログ草稿を完成させる。
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