最終年度は8月に国立インドネシア・イスラーム大学ジャカルタ校で開催された国際シンポジウムで研究成果を報告し、海外の研究者と意見交換を行ったほか、同大学図書館、インドネシア国立図書館でマレー語イスラーム写本の調査を行った。12月2日はマレーシア、クアラルンプールのマレーシア国立博物館および同付属図書館、マレーシア工科大学イスラーム文明研究センターにて資料収集を行った。3月21-25日には、フィリピン、マニラにて資料調査、および、カタログ編纂に関する海外研究協力者との打ち合わせを行った。 7月には本研究の成果として、タウスグ語ジャウィ表記文書の翻字・英訳と英文研究論文を上智大学アジア文化研究所モノグラフとして刊行した。そのほか、本研究の最大の成果として、ミンダナオ島マラウィ市のイスラーム学者、シャイク・ムハンマド・サイド氏のコレクションの解題付写本カタログを編纂し、草稿を完成させた。これまでフィリピンのイスラーム写本はその多くが散逸し、の体系的な集成や保存がほとんど行われてこなかった。このカタログは、サイド家に伝わるマレー語、アラビア語、マラナオ語の写本45点を収録し、その内容を詳細に英語で解説したものであり、フィリピンのイスラームに関する世界で最初の本格的な資料集として重要である。このカタログには、本研究者のほか、インドネシア、フィリピン、英国の海外協力研究者による、同資料を用いた研究論文も収録されており、この分野の研究の進展に大きく貢献するものである。本カタログは、上智大学アジア文化研究所より、2015年8月に刊行を予定している。
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