本研究では、以下の3点を目的とした。(1)2008‐2009年度科研費(挑戦的萌芽研究)「植民地期台湾映画フィルム史料の歴史学的整理分析」(研究代表者:三澤真美恵)による国立台湾歴史博物館所蔵植民地期映画フィルム史料の研究を基礎とし、データベースを構築、ウェブなどを利用して公開、広く研究調査に資する。(2)歴史学のみならず複数の異なる視角から上記の採録データを活用し、植民地期映画フィルム史料の研究可能性を具体的に提示する。(3)東アジア他地域と共同研究を進め、東アジアにおける植民地期映画フィルム史料の多角的研究モデルを構築する。 本研究の成果として、上記の目的(1)については、引き継ぎ国立台湾歴史博物館との共同研究を進め、脚本資料に関して採録データすべての校正を行った。映像資料については希少性の高い「1群=台史博のみに所蔵があるフィルム」の採録と校正を行った。これらのデータは2015年3月26日からホームページ「三澤研究室」( http://misawa.pbworks.com/w/page/86462635/FrontPage )で公開している。目的(2)については、台湾、香港、中国、韓国、フランス、ドイツを含む内外の研究者を招請して講演会・研究会・ワークショップ・合同シンポジウムなどを実施した(2011年度3回、2012年度3回、2013年度1回、2014年度1回)。このうち特に台史博フィルム史料を活用した成果としては研究報告1篇(音楽学)、研究論文2編(音楽学、文化映画)がある。目的(3)については、報告者自身が、アメリカ合衆国、韓国、台湾などの各地で学会報告や講演を実施し、日本語のほか英語、中国語、韓国語、フランス語などの言語(翻訳含む)で研究論文を発表し、より広い文脈のなかで東アジアにおける植民地期映画フィルム史料の多角的研究モデルを構築することを目指した。
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